第20回毎月短歌・テーマ詠「母の短歌」部門 作品一覧

第20回毎月短歌・テーマ詠「母の短歌」部門に投稿いただいた短歌作品の一覧です(表示順はランダムです)

[選評結果一覧など「毎月短歌コミュニティ」でいちはやくまとめられています。参加はこちらから]


母の乳首瓶の乳首みな人は噛んで浮き世を生き延びてきた(塩本抄

見上げれば灯るあかり母の窓いるわけないのにいるはずないのに(ゆうきみのり

母という役を演じた妹は死んでしまった小鳥を撫でる(てと

アルバムに貼れぬ思い出予告なく少年の声が変わり始める(小仲翠太

最期の日「母」のおにぎり食べたいとせがんだ祖母の願い叶わず(稲子

冠をかぶって紅く美しく甘く実った苺はmother(真朱

母親の手描きのレシピに忠実に作る煮付けがただ甘いだけ(谷 たにし

なっちゃんと呼ばれた頃の顔をして眠ったままの祖母をみる母(きいろい

女とふものの果たせる役柄の数多きこと母を見をれば(ピロ

旧姓を名乗りし頃の面影をビールを注ぐその手に見つつ(あだむ

【ほぼ新品】スーツ一式と革靴  母さん、ごめんよ こんな息子で(佐為

赤べこのただ弱く弱く首を振り 母はそういう生き方をした(大頭非力

カラオケで懐メロたまに歌うのは運転席に母がいたから(織部ゆい

廊下を走らないまま親になる。飴二粒を鞭にて飛ばす。(非鋭理反

バナナオレ 俺は母にはなれなくてでこぼこの紙パックを潰す(仁科篠

湯気の中ぽつり呟く思いさえ受けとめてくれた母の笑顔(はざくらめい

スノームーン 胎児の姿勢で眠るこのひとの子を産みたかったこととか(石綱青衣

よい母であれたか子に問うことはなく風は木の葉をそよがせて吹く(小野小乃々

ぼくのママにっがいクッキーからいチョコたべててすっごいおとななんだよ(サ行

わたしではない太陽が昇っても向日葵だろう母の首すじ(夏谷くらら

え、マジで?フォロワーさんの夕食のオムレツおかんと焦げ目も同じ(叭居

母さんに母さんは亡くあの日々は不器用な愛だったと気付く(すずきみなみ

採血の悲鳴をぐっと飲み込める 息子のためにカマキリを捕る(北野白熊

愛し方なんて教えてあげるから来世で母を産み直したい(10

喧嘩してどう謝るか迷う昼 弁当箱にりんごのうさぎ(睡密堂

年の瀬よ台所に立つ母の背を眺められるはあと何回か(佐為

母の目の奥には魔物が棲んでいていつも激しい焔を放つ(佐竹紫円

お皿には仔ウサギ六匹すやすやと真っ赤な林檎の母より産まれ(宇井モナミ

料理せぬ父の高さに設えたコンロで今日も味噌を溶く母(新井田歌子

幼き日してくれたよに抱きしめて泣き入る母と途方に暮れる(ゆうきみのり

天然と言われる母の若き日の大きなカールの聖子ちゃんカット(紅生姜天ひやむぎっ

液状化しそうな土地に建つ家のわたしの母のような健気さ(瀬生ゆう子

/みんな って、分母を意識するきみの1は分子じゃなくて整数(真朱

星空の下で流れるニュースへと「やーね」と言ってつままれたポテチ(一行よしみ

「お母さん、死んでるんだよね」って、君が。想像しちゃってごめん、顔とか(雨野水月

垂らすほど乳はないけど子は育ち 今じゃすっかり気の合う仲間([おもらし](https://x.com/mugino _omorashi ))

駅まではさっき見ていたペンギンをまねて歩いた母の隣りで(畳川鷺々

私から「子」という名札を奪い泣く母の声よく響くキッチン(10

モッツァレラチーズを使ってみたのよと母は弾んだモッツァレラって(木ノ宮むじな

おかんおかーんおかんおかーん おかああん 春におかんはF1になる(白雨冬子

母からの「元気にしてる?」に誤魔化して「少し暖かくなってきてるよ」(結生

「母のこと大好きなんで」と笑む人の目の奥を見る 普通に黒い(青野 朔

譲葉《ユズリハ》の葉が落ちるとき「母親」は役からただの関係になる(木ノ宮むじな

田舎から届いた野菜生活がからあげクンを無言で睨む(村川愉季

林檎手に姫に毒を盛る我を母は撮ってた五列目端で(宇井モナミ

「帰りたい」と言う母と今日も玄関で手をつなぎ聞く夕焼け小焼け(枝香

〔母艦ヨリ帰投命令受電セリ〕そんなことよりジャムを煮るわよ(しみず

お年玉みたいに母が預かって返ってこない私の命(北野白熊

友たちが日に日に母となっていくInstagramに空虚ないいね(早春

お母さんあなたはとても強情で振り回すからたまに逃げるね(山野たみ

目を閉じて最期の息をフーと吐き母の身体は少し軽やか(田仲トオル

背中にはぺたぺた黒い手のかたち母の言葉は呪いになって(月夜の雨

母となりピアスの穴は塞がって失ったのか取り戻したのか(白鳥

はちみつと詩情を僕にくれた母の果実みたいな瞳にふれて(手嶋 楓

母からの受け継ぎし鉄線花《はな》今朝もまた見て見て見てと囁くように(古井 朔

母親にならないの私 降車ボタンねらう小さなゆびの眩しさ(ゆかりごはん

百日紅と凌霄花はわかる路花の名を知るあなたを悼む(りのん

濃厚なチーズとお茶のマリアージュ、美味しさ語る母とセッション(一行よしみ

土曜日の夕方 母の横顔を見上げていつも濡れる仔羊(松たかコンヌ

言われても言わなくてもねわかるのよ顔そっくりなあんたの気持ち(箭田儀一

母の味6割くらい引き継いで我が家の味になるちらし寿司(青色紺色

穏やかな母のぬくもりあった日の風邪は孤独なものじゃなかった(茶葉

お腹《ここ》にいるあなたのおかげなのでしょう 檸檬がこんなに甘いのは(Umi.

教室で出会わなければ肝っ玉母ちゃんとして生きていられた(あだむ

少し冷めた紅茶に母の手の温み思い出されてまた泣いている(田仲トオル

おとうさん指で拇印をおすように母はときどき父でもあった(汐留ライス

揶揄をする鏡写しの母がまた三面鏡の奥に潜んで(枝香

夜沈む冷たき水に抱《だ》く腕のなか我が子の笑み、朝を羽織りて(いわかみあ

「あの人」とかつての夫を呼ぶときの母がみている昏きみずうみ(くらたか湖春

包丁で指切ったと笑う母炊事くらい代われば痛みは癒えただろうか(フラ子

父と子の通訳として今日もある母が付け足す語尾の優しさ(奥 かすみ

あと何回、あなたと降りられるのでしょうこのスロープに影を作って(一行よしみ

エスコートのように腕組むやわらかさ しろたえにのうでストールのそで(中村祐希

山裾にあわく林檎のけぶるころ母と奏でた花摘みの唄(塩本抄

母にお花のかんむりを渡したらとてもかわいい苺が咲いた日(佐為

拒むこと許されなくて苦しくて母親の呪いが付きまとう(桐谷やまと

初めて子の名を書くときの喜びが漢字の隙間をも桃色に染めあげてく(フラ子

とほき日の旅立つ我に糞ダサい勝負パンツを母はたまへり(畳川鷺々

あの日から、母に似た人見かけると無駄に心が嬉しくなるよ(京本らき

野菜室を満タンにする母さんはいつでも冬籠りの覚悟で(琴里梨央

郷里にて待つ母にわたしの雛は棄てろと鳴いておくれ鶯(10

ミレーの描く農婦のようにじゃが芋をむくときまるくなる母の背な(小仲翠太

母さんは母さんだった何度でも裏切ったって傷つけたって(白鳥

母に手を引かれたボクが母の手を引いて想い出の場所をめぐる(空虚 シガイ

「とりチキン食べるかい」などと母は訊くチキンレッグと呼ばれる肉だ(畳川鷺々

「死にたい」と思う私を引き止めるこころの声はきっと母さん(ゆりのはなこ

流氷はそのあたたかさに殺されて姿を消した母なる海で(ツキミサキ

薄皮の腕をのばして孫に手をむげにひかれて軽やか母は(まちのあき

ありがとう、の一言焚べて母親はぽんぽん船のように働く(中村祐希

リビングの灯りを消して深呼吸幻聴としての母の笑い声(アサコル

誰よりも名前に込めた意味を知る母が私を呼ぶ時の声(空虚 シガイ

母親の咎める目つきがこびりつきピアスを開ける勇気が出ない(早春

終活をしようと思うと母が告げタイムラプスで閉じてゆく花(白鳥

スポンジのキュッキュッ音が響く中父はテレビの前でうたた寝(あだむ

膨らんだお腹のなかの<誰か>は知ってる<どんな人物か>知らず(いわかみあ

子を産んで知るわたしって種だった花とか草とおなじいきもの(たな

風呂上がり母は頭にタオル巻きあら熱をとる苺のように(yohei)

しゅわしゅわといのちのもえている土手へ 母を運んでゆく車椅子(大頭非力

脇役のひとりが私であったこと母が主役の母の人生(小野小乃々

握り飯小さくなった母の手を何も言えずに見送った朝(箭田儀一

祖母は「あのオバサン怖い」我に言う。母は粗相を毎日拭う(辰野音子

おかあさん 何度も呼んだ(おかあさん)声にならない声で何度も(月夜の雨

熟れすぎたトマトを捥いでやる 母さん、もう道は自分で選びます(篠田葉子

年老いた母流されぬよう腕を組んで西口目指す白日(新井田歌子

三階のバルコニーから弁当を投げて届ける母の雄叫び(宇祖田都子

どんな花咲くかと教師の顔をして母がつついた不揃いの種(りのん

何もかも忘れてしまう今ならば呪いも解けて母は自由だ(ゆうきみのり

母親が趣味でやってるミュージカルは興味はないけどまあまあうまい(仁科篠

いつだって迷子みたいだ あの人の前では少し時空が歪む(にいたかりんご

病床で眠り続ける母の手の伸びゆく爪に生を教わる(Umi.

書き初めを母の手本をなぞらずに出して小さく来た反抗期(村川愉季

ママのママ? ばぁばはママじゃないでしょ?と吾子の頭にハテナ3つ(キュア詩詠み猫ライダー

ため息が母と同じになってきて今なら二人で抱き合えるのに(ume

26インチの車輪をこいで行く娘と私がつなぐ命だ(木ノ宮むじな

両親と相撲を観る午後案外と的確な母の解説を聞く(琴里梨央

母の日のてがみは少し滲みおりかばんの底で梅雨をすごして(奥 かすみ

父のこえ思い出せぬと泣きじゃくる4さいを抱く零れぬように(なにもない子

怒りをも漂白するよに食器漬け 母の涙は塩素の匂い(ルミナ

傑作はどんな子供を指すだろう 失敗作と母に呼ばれて(北野白熊

キッチンで潰れし苺をグツグツととろけて甘く母おもふ春(古井 朔

いつまでも子供扱いする母の子供でいたい いついつまでも(桜咲

あなたから生まれただけよもういいのやめてもいいのさようなら、ママ(てと

母さんはハンバーグだと言っていたハンバーグではなかったおかず(宇祖田都子

「母さんは母さんになって良かった」と言い聞かす母になにもできない(綿鍋和智子

食べカスも脱ぎっぱなしの靴下も上京したら見れないな(りお

誕生日、知らぬメアドのおめでとう「どなたでしょうか?」「あなたの母です」(よいまね

母という役目を終えてさぁ私鳥になろうか魚になろか(三好碧

冬の陽《ひ》にももいろほころぶ返り花 わたしのなかにふたつの心音(碧乃そら

時を経て沁みるものあり雑踏に母が好んだ歌をまた聴く(りのん

彼女には手本もなくて血みどろで痛くて逃げて怖くて好きだ(でち)

瓶詰めの蜂蜜三つ届いたし真似してみようかな隠し味(結生

母親になって後悔してるひとのブログを読む俺 なにがほしいの(仁科篠

母にならなかった母の微笑みを見たい 生まれてきたくなかった(綿鍋和智子

蚊をいつも慈悲の心で潰してる生まれたかった訳じゃないから(雨野水月

この子にも腹を痛めた母がいたチュールで祝うじゅういちの冬(稲子

育児に疲れ 柘榴をひとかけ食べたらば鬼子母神の憂いも解るだろうか(フラ子

母の手のしわを数える帰り道あたたかい場所いつもある場所(ホワイトアスパラ

母は神 呪文ひとつで海岸の砂粒すべてを氷に変える(月夜の雨

伊達巻きと栗きんとんがあればいい母と2人の初めての朝(静麗

母は寝る赤子を布団に横たえる姿勢で父の納骨をする(ぐりこ

日中を独り過ごした母の居た場所は今でもささくれたまま(明眼子

僕よりも十三センチ背の低い母から僕は産まれたんだね(須藤純貴

明晰夢海辺の街の堤防の母の姿は十五の少女(ツキミサキ

夕闇におぼろにゆれる知らぬ花 ひかんざくらね 母はつぶやく(叭居

かみさまもにんげんだって知った頃 わたしは少しおとなになった(にいたかりんご

母の日に輪廻転生ガネーシャになって手渡す一輪の花(じもぶん

蟹座って母性が強いって言うけどさ強いのはオカン性のほうカニよ(しみず

抱き合ったしめじの写真、母さんは少し長めに眺めていたね(白川楼瑠

拗らせた承認欲求の奥底で母を求めて泣いている(はざくらめい

春に野で苺になったははおやをパンに挟んでとっておきたい(きいろい

これまでに流した血には母性など見当たらなくて三日月の影(てと

無言にてドンと出された卵焼きたぶん僕へのイエローカード(奥 かすみ

鈴蘭が好きだった母に鈴蘭を供える今も解けない微毒(ゆかりごはん

こどもらに ウサチャンリンゴ せがまれた!「おれのおててに ハハウエしょうかんっ!」(サ行

「勝手にしなさい」の意味がわからずに風船に乗り母を見おろす(まちのあき

ネグレクト マザーボードの愛の機器 回路図にない母のぬくもり(松たかコンヌ

母親になりたかったかもしれないミミは黙って尻尾を振るが(ume

紫陽花のほんとうの花を覗くとき母の流した涙がひかる(夏谷くらら

去年から祖母とは違う丸餅で澄まし仕立ての雑煮を配る(インアン

おにぎりを毎朝握る母の背を昼思い出し美味しさほころぶ(りお

「あの人」とかつての夫を呼ぶときの母がみている昏きみずうみ(くらたか湖春

ひとつずつ余計な枷を投げ捨てて母高らかにライク・ア・ヴァージン(汐留ライス

こんなにも秒針の音が響いてる母の気配がしないリビング(アサコル

寒ければ布団を先にかけてやる母親といふ心になれば(まちのあき

はなみずを吸ってあげたと繰り返し繰り返し言う母の愛情(青野 朔

母の愛を知らない母に生まれたこと 僕には運も才能もない(北乃銀猫

モノクロのちぎり絵のよう丁寧に敷き詰められた今日ののり弁(インアン

帰り道を忘れた彼女の言い訳が小さく小さくなって悲しい(大頭非力

ときめきというより護符だ機械編みを習った頃の母のセーター(塩本抄

温かい母の背中に抱きついた幼き頃は遠い話で(雨宮雨霧

母がしてくれてたようにわれも子にやさしい誤解だけしていたい(小野小乃々

友だちの母は友だちの母だけどボクのことも叱ってくれた(空虚 シガイ

病室を出ることはない母の手が溶けない雪の結晶を編む(宇祖田都子

南瓜のたいたん食べる?母と似た発音がしゅむ秋の夕餉は(朝路千景)

母さんが清算せずにいた罪を背負い通勤する生殖器(松たかコンヌ

病院でねだって買ってもらうガム 売店の側にあるのは出口(村川愉季

大丈夫? 元気にしてる? 電話くる心配なんだな だって母だもの(にのみや朱乃

風邪の日は額に触れたる母の手と黄桃缶をひとり占めして(宇井モナミ

アボカドの種だけ残し皿の上母が見るのは私じゃなくて(箭田儀一

明星の付録の壁のポスターのチェッカーズに口紅を塗る母(ツキミサキ

母の日を互いによろこべるような母娘《おやこ》であれば そう思ってた(北乃銀猫

種無しの葡萄に母はいるのかな 期待されずに間引かれる苗(古井 朔

大仏の胎内のなか「性別を超えて生めれば」なんて語った(真朱

エアコンの雑音切れば溢れ出す母親不在の静寂《しじま》の匂い(アサコル

お母さんが買ってくる服のセンスを疑い少年の世界が始まる(汐留ライス

いくつかの許しきたこと石段につまずく父に添える母の手(小仲翠太

鏡台の色とりどりに手を伸ばしママになろうとしてたあの頃(桜咲

午後2時の猫のあくびがうつったか畳でごろりと横になる母(琴里梨央

お袋の味と書かれたレトルトがレンジで膨れて明日帰ろう(谷 たにし

母にならぬことを選べたかあさんのために生まれるべきでなかった(綿鍋和智子

背を押した手のぬくもりを思い出す進む先にはまだ母の影(ジェノベーゼパスタ

もう一度ひとに生まれ変わるのなら空の上から母親選ぶ(北乃銀猫

花びらの娘の姿を孫は呼び 声聞き山の木立なるわたし(いわかみあ


次世代短歌毎月短歌

上部へスクロール