第21回毎月短歌・テーマ詠「桜や花」部門に投稿いただいた短歌作品の一覧です(表示順はランダムです)
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桜色していた爪を切り落とし、ぱちん、ぱちん、と軽くなる指(萎竹)
春の夕 見頃はまだか 気になって桜並木を 歩く幸せ(とし)
きみはもう枯れてしまっているけれど水をやるのが癖になっていて(塩﨑)
花筏モーセのように突き進むカルガモが描く放物線(まつさかゆう)
散りざまが儚いねって言う前にもっと見に来て欲しかったのに(鯖虎)
松明の火を持つようにチューリップ一輪掲げ家へ走ろう(辰野音子)
「かわいい」をいっぱいくれる スカートや花の下着を選ばなくても(村崎残滓)
さくら散る さながら春の発表会ぼくらも好きに春を演ろうか(サ行)
散っていく姿が好きと微笑んで私を春に例えた人が(にいたかりんご)
春になりちゃんと桜が咲くようにどれだけだって愛してみせる(空虚 シガイ)
灯のようなあなたに触れて桃花水みたいにきれいになれない泪(石綱青衣)
あまりにも桜の白さが目について流石に俺もちょっと西行(岡田道一)
はたはたとノートの文字をにじませた涙にも似て雨の桜は(青野 朔)
つづみぐさ探す代わりに砂利を摘む ひそりひそりと雷鳴はくる(六日野あやめ)
良いことがありますように春服で彩るポールハンガーザクラ(アゲとチクワ)
靴底の桜のはなを払うときわたしの春が終わったと知る(鹿ヶ谷街庵(ししがたにがいあん))
葉に沿って小さき光の玉散らし点描画家が咲かせるミモザ(宇井モナミ)
手のひらに飛び込んできた花びらをせっかくだからと電車に乗せて(白鳥)
桜色のリップクリームくり出してつま先立ちで青空をゆく(月夜の雨)
手折って、と言いたげに花震わせてそのひとひらも持つ覚悟無く(かなしだ)
花びらが空の果てまで舞い上がり平たく言えば愛しています(短歌パンダ)
女子部屋の前に下足が散らばって花びらみたい踏まないでおく(村川愉季)
私の心に花が降るならば花が咲くらん 雨の桜が(祥)
大好きでハッピーででも死にたくてそうね、たとえば桜みたいな(折戸みおこ)
滑走路だったのだろう僕たちを三年みていた桜並木は(鹿ヶ谷街庵(ししがたにがいあん))
新しいギターケースと制服についた花びら新しいきみ(木ノ宮むじな)
打首のようにタンポポ摘み取って罪を重ねるあなたとわたし(北野白熊)
やわらかい花だったんだゆびさきに小さくあかく肉芽は萌えて(仁科篠)
三日月を盗蜜しようと企てた反らせたままの白い首すじ(きいろい)
桜 ただそこで咲いててそれだけできみと別れる口実になる(まる弥)
その花を散らすサクラと落つツバキ咲いたからには枯れるものかと(桜咲)
接ぎ木をくり返された桜の木よ年を重ねて個性が光る(いなほ)
この春もヒヤシンスは生まれ来ず水仙だけが佇んでいる庭(別木れすり)
教室に満ちる別れもそよ風に緋寒桜の蕾たわわに(叭居)
儚きは春に降る雪、花筏、ともに流れて街川下る(祥)
夜桜を見上げて飲んだ酒の味なぜか忘れることができない(雨宮雨霧)
とりどりの花のベンチに腰掛けるちいさなふたりの頬のまろやか(すずきみなみ)
不治の病を治すための花みたいにささやいた、さっきはごめんね(塩﨑)
ビル街の谷の夜桜囲んだら灯りのある部屋みな仲間(てん)
四月から遠くへ行ってしまう子をタンポポお前も見送るのだな(宇井モナミ)
酔い潰れブルーシートに寝る君を桜はずっと見守っている(黄瀬一暉)
朝顔を拝さざるまま過ぐ夏も彩る青の氷菓の甘く(鯖虎)
両親と桜並木の屋台見て一目惚れしたおやつを食べた(須藤純貴)
散りぎわを秘める意気地に目を伏せて酔狂気取りで眺める桜(じもぶん)
いっせいに地表を桜色に染め地球は恋を隠しきれない(銀浪)
花筏 一春の夢と喧噪を海へと還す葬列として(岡田道一)
3月の終わりに雨が止まなくて目障りだったのだろう、桜(白川みどり)
散ることもよろこびなのだ妖精のように桜の花びらは舞う(月夜の雨)
桜ってラムネみたいに溶ける瞬間(とき)吐息のような冷たさがある(たな)
ふくらんだつぼみが開くそのままにぼくは会社を辞めてきました(竜泉寺成田)
汽車道を二人でゆけば桜雨 泣いても溢れぬ海になりたい(石綱青衣)
二つ目のやくそくを破る季節を味わっている花は散るだけ(水也)
道ばかり見て歩くからその影で空を見上げた桜二分咲き(まほう野まほう)
この恋は落ちるというよりは墜落 死に急ぐかのように椿(Umi.)
花びらの想像上の肩を抱き、あなた、子どものようにわらった(葉和遊)
赤ちゃんがぽこんとお腹を蹴るときに地球の裏でゆれるたんぽぽ(鹿ヶ谷街庵(ししがたにがいあん))
散る桜掴みたくって追いかけて大人だったと気づく川べり(南千里)
咲いたねと 指で囀る 花筏 誰かひとひら 掬いませんか(わんダフル北旅人)
安直に幸せそうなスイートピーひらひら、あなたに救われて春(くじら)
速報です桜が急に咲きました ポップさくらぽーんさくらポップ(別木れすり)
花々の海に飛び込んだら空はああ、でもみんな最後はそうだ(yohei)
うまく生きれない私はきっと白夜に闇を待つバオバブの花(まつさかゆう)
クラゲだと思い込んでる花びらに筏のことを教えてあげる(てと)
あんなにも桜色している花の手のひらに降るひとひら白く(桜咲)
この街の春は通過しゆく汽車で切符のように散るさくらばな(小野小乃々)
八重桜 これまで歩んできた道を肯うようにまるくわらって(佐竹紫円)
花開き雨が上がりて幕が開く広まっていけ仰げば尊し(夕凪遙)
もう咲いた? いや遅れてる 三光年離れたきみとわけあう桜(小仲翠太)
花束にするための花切り取って降るはなびらの下で泣いてる(水也)
麗らかが桜とともに進軍す 本屋へひとり向かうわれへと(非鋭理反)
(サクラサク)ひらかぬ花のたくわえた蕾のうちの生命を見よ(青野 朔)
前かごを花束でいっぱいにした自転車でどぶ川に飛びこむ(汐留ライス)
幸福なあなたの庭に埋められて一等きれいに咲くから見てろ(にいたかりんご)
花束を持つ人によく出会うのは会うようになる、そうなっていて(いわかみあ)
国中の春の神様起こすため桜前線北上中(Umi.)
遅咲きの水仙どこか眠そうに綻ぶ黄色に訪れる春(アサコル)
生きていく。桜が咲くなら生きていく。また一年後、逢いにくるから(Rhythm)
冬がさあ頑張り時ってもんなのに 春だけ価値を認めんな馬鹿(玉響沙耶)
遅刻理由:柄にもなく花などを買い、渡す口実探してました(つし)
わがままは笑って言おう 初桜、僕をさみしい色にしないで(海)
私たち吉野桜のようだった優しいピンクのスカートゆれて(山野たみ)
もう一度会えたら何を話そうか 桜見るたび思い出す人(わたこ)
新しい風に蕾はせかされて春の微熱にたどりつけない(よしなに)
昨日まで咲いてた花が散っていた私はずっと咲いていたいよ(織部ゆい)
幼子が髪をなびかせ滑り降り全開の笑みに桜も舞って(月乃さくは)
咲いてあなたに春を伝えられたら 散る姿まで春を愛して(半)
花を毎週買っているきれいだと感じなくなる日をおそれてる(てん)
サクラサケ いまだ小さき蕾でも天を仰げばいつだって青(漁火いさな)
寒空を硬い蕾で耐えている力強さが桜にはある(桐谷やまと)
桃の花見つけるたびに君の問う「桃か桜か」これだこれこれ(ネコニスケ)
森の中ある日出会った徒花に後は散るだけ実のない話し(京本らき)
それぞれの花がそれぞれ咲いている誰も見向きしなくても咲く(桐谷やまと)
朧月春の夜のみの巡り会い儚さ想う寧楽のみやこの(るるちびにゃん)
地下道で迷子になった桜花行き交う人の花見1秒(羽)
ドブ川沿いの桜を眺め居る 新生活の白昼はひとり(結城一縷)
心臓の音の重なり合う駅で花を売りつくして もう静か(宇祖田都子)
ダウンよりスプリングコートをきてゆく都ざくらはかろやかに観る(佐々木ゆか)
散る桜ありがとうね最期だけは「桜る」という動詞にしてあげる(yohei)
スーパーで売られてた春桜買う228円の春を(ツキミサキ)
花は散る、主役の座から退いて木陰差し出す幸せもある(つし)
青空の淡き光や梅の咲く街には春が一番乗りで(ほしのひかり)
幾千のハッピーエンドのその先を知らないままで花弁を拾う(はるかぜ)
花の名がついたガンダムの話を花屋のなかでしないでほしい(村川愉季)
ふたつ買いふたりで飲んでそのあとに花瓶となったあなたのコップ(箭田儀一)
手を繋ぐようにひととき咲いていたはじめからはなればなれの花(白川みどり)
春ごとに幾度も命のシーソーが傾き切って灰桜降る(ほしのひかり)
春告げる蕾ふくらみ「まだ、まだ」と温い天気にくす玉を割る(浅乃しづく)
花陰で番をしている巡礼は不意に始まってしまうと知って(川瀬十萠子)
美しく咲く百合の花踏みつけて 叶わなかった敵わなかった(泡姫なずな)
一面に広がるたくさんのたんぽぽ散らばる黄色いボタンのよう(いなほ)
花びらの1つ1つに出会いがある満員電車の隣は誰か(1°みちよ)
誰にでも他人(ひと)に言えない傷がある花盗人(はなぬすびと)の手折った枝に(泡姫なずな)
名を知れば鮮やかになる散歩道先いく君は花にくわしい(みぎひと)
またひとひらと脱がされて花びらは予感している風のはじまり(よしなに)
花の終末 ひとさしゆびと鳥かごの恋 ともしびを、模擬戦闘を(ぶりきのかに)
春色のインクで綴るひとひらの白木蓮を便箋にして(銀浪)
ありがとうさようならとは誰の声今年は咲かない君か、桜木(北乃銀猫)
散るときの地球の色は青よりも少しピンクになってるといい(萎竹)
早咲きの桜模様の制服を段ボールいえ冷凍庫へと(瑞波草)
また春に置いていかれてこの恋は散る為だけに咲いただろうか(にいたかりんご)
ことりたち啄み落ちるさくらにも命はあって生きていたこと(水柿菜か)
サヨウナラ降り散るピンクの花びらを紙吹雪とし春を迎える(たな)
怪獣が壊していったこの街を彩る花が一番強い(桐谷やまと)
シンバルの音の一撃桜散るロックンロールが始まるぞ(黄瀬一暉)
あなたの祝福になりたかった わたしの代わりに花びらは舞って(水無月ニナ)
春を告ぐお役目担い老木に鞭打ち花を咲かせましょう(稲子)
花びらのひとひらさへも手紙なら差出人はきみ恋ふるわれ(小野小乃々)
日々感謝いくつになってもあなたって足元に咲くタンポポだから(棚果)
すれ違うひとそれぞれの背にずっと握られたままの花のあること(夏谷くらら)
はらはらと零れ落ちてく花びらと恋がひっそり終わりを告げる(静麗)
桜散る音をひとひら受け継いで光の匂いに耳澄ます夜(非鋭理反)
散り際がうるさくて花吹雪 世界のすべてミュートにする二人(水無月ニナ)
野外フェス春風にノるカラフルな一体感よ私も入れて(イノセントスキー)
靴紐も桜の蕾もほころびて立ち止まり方を覚える春だ(ゆかりごはん)
まだ雪の名残のような真白さだ今年最初に咲いた桜は(宇井モナミ)
花はみな散ってしまうのに桜だけみんな惜しむし俺も泣いちゃう(叭居)
ウメという名前の祖母は梅の香《か》を遺影にまとい曾孫を護る (北川)
チューリップ、一年生のランドセルどちらも少し照れてるようで(山野たみ)
雨上がり桜並木の足元は人魚が通って溢れた鱗(市井すい)
回帰線 超えて咲く花プロテアの一輪だけの強さがひらく(水の眠り)
サクラサク次の桜を待つ人へ赤本の棚空になる春(まほう野まほう)
またひとつ増える桜の思い出がふたりを強く繋いでくれる(花林なずな)
人外が紛れていても不思議ではないほどの群れ 桜に呼ばれ(北乃銀猫)
ヒロインのその後のようなふるまいで排水溝にたまるはなびら(短歌パンダ)
私の感情は私のものである 桜を踏み潰して歩く(雨野水月)
一つめのピンクの画面サクラサク我が校《うち》にどうぞの嬉しさたるや(ネコニスケ)
淀みたる川面けふはとどろいて桜雨降る進入禁止(古井 朔)
引越しが終わる頃には散っている白木蓮と三年二組(まつさかゆう)
はかなさと赤子を抱いた頼りなさ窓越しに見る白い桜は(山野たみ)
ひとよひとよにひとみごろ 君のいない桜の園を否定できない(朝路千景)
遠くまで漕いでゆくため忘れるの花の名前も櫂の重みも(夏谷くらら)
狂おしい春にまどわぬ杖としてチューリップの花、赤、白、黄色(水の眠り)
誤魔化したキモチは蕾 ふくらんで開花しそうな恋は何度目?(真朱)
葉と花と蕾が同じ枝にありひとつの色じゃないのがきれい(汐留ライス)
桜降る青空の下寝転んで流れる時をそっと見つめて(雨宮雨霧)
花の時期だけにちやほやするようなそんな奴らに泣かされるな、君(別木れすり)
イエローの花の知られぬ瓜の群れ春過ぐを待つ教室の隅(鯖虎)
どの花もハナと呼んでるわたくしは花からヒトとしか呼ばれない(てと)
お花見と共にお月見できるって今日知ることができてよかった(青色紺色)
おい桜、いやならいやと言っていい そっと咲きたいときもあるだろ(竜泉寺成田)
いつもより遅く帰って来たひとのワイシャツがまた花の匂いで(石綱青衣)
「好きだった」そんな過去形よりもまだ押し花の方があざやかだった(箭田儀一)
アイデアも桜のようにはらはらと風に吹かれて浮かんでくれよ(黄瀬一暉)
「久しぶり」宛先眺め笑みこぼれ桜の開花待たずきた春(花己)
ありがとう咲いた私が花がらになるまで君は愛してくれた(織部ゆい)
これでもうさよならだよとまなうらに焼き付けている今年の桜(睡密堂)
花びらが弾丸としてたましいを何回だって撃ち抜いてゆく(てと)
便宜上 アクリル板に印刷で 花見をしようね 並び立ってね(わんダフル北旅人)
一番町から三番町ぬけ九段下千鳥の桜に祈る万歳(小仲翠太)
見あげれば花の眩しさ何ルクス彼方に母の顔立ちをして(はるかぜ)
透明になりたひ夜の朧月いつか終わるの桜蕊ふる(古井 朔)
引いて見るからピンクに見える桜 距離を置くのもそう悪くはない(空虚 シガイ)
木の下でじっと団子を見るきみは花より団子(食わないバージョン)(汐留ライス)
雪という圧政に耐えた種たちが花を咲かせる革命の春(崎島スジオ)
渡すのか渡されたのか花束を抱えた人が降りる夕暮れ(白鳥)
花々の嘘で装わなくたっていつだってきれいなわたしたち(葉和遊)
刺してみて 風に吹かれる花束のスピッツみたいに軽やかな棘(塩﨑)
花見から酔いつつ帰る途《みち》の桜に見守られている 春は来た(いわかみあ)
クレヨンで桜前線 あなたなら最期の恋を知っていますか(納戸青)
夫持つ身にも恋の芽はうずく 墓場に花も咲いているでしょう(稲子)
ゆるやかに頭をかしげ聴く姿先の先まで咲くフリージア(水の眠り)
水鏡 晴れの装い 映し出し 花の彩り 少しとまどう(菊花)
薄衣の花は夜からやってくるスクランブルの信号待ちに(短歌パンダ)
言い訳をしようと思う今日の日はねえ桜なら許されるよね(南千里)
ひとめ見て惹かれあうだろうとしても 桜と紅葉は出会えない(Umi.)
巣立ちの日荷台に積もりし たくさんの花びらふわり 飛びたってゆき(くじら)
場所取りの桜の下でクラッカー齧ってばかり今朝逃げた犬(宇祖田都子)
命散る桜を見ながら酒を飲む俺の遺灰も桃色に咲け(吉永定)
さびれゆく工業都市に春が来たそこここに桜咲き街咲う(わらう)(よいしょ上手の高木さん)
ふたりには積もることない想い出を 知らぬ存ぜぬ花びらは舞う(駒歩唯月)
満開の河津桜に青空を和太鼓よ雲を蹴散らしてゆけ(さく)
瀬戸内の島のさくらは海染める 薄紅色のほお緩む春(稲子)
花びらかリュックに降りるそれは花 君との別れ際に天使が(いわかみあ)
突然の桜吹雪に気を取られ最後のピース撮り損ねたよ(桜咲)
花冷えを越えてきみとの春が来る 何千回もそうしていたい(真朱)
茗荷にも美しく咲く花がありしずかに笑う反抗期の子(みぎひと)
ホオズキを落として進むあたたかなわが家を目指すこどものように(六日野あやめ)
見切り品コーナーに咲く花束を買う手の動きは春を忘れる(箭田儀一)
もう一度愛されるため旧びゆく市街ミモザの花に溺れて(夏谷くらら)
桜より桜見る人をみるのが好き60過ぎて今年気付いた(小林とらこ)
跪き指折りたたみ祈るとき桜の花はただ狂い咲く(泡姫なずな)
満開は いつお天気は あれこれと思いはつのり 桜散る散る(とし)
恋う人にかけ寄ることもかなわずに涙がわりに零す花びら(さんそ)
桜ではたぶんないけど思い切り泣いてもゆるしてくれそうな花(小仲翠太)
手先から花びらとなりきえてゆくように死ねたら綺麗でしょうね(空虚 シガイ)
あの八分咲きの桜の木の下で誓いを立ててしまえばよかった(白川みどり)
早咲きの桜か梅か幻かわからなくてもわたしは歌人(畳川鷺々)
花吹雪 あなたの顔を忘れないように挟んだ栞が落ちる(雨野水月)
ミモレ丈揺れれば揺れるすずらんの刺繍あなたは会える春風(ほしのひかり)
先輩の残像なぞる花びらが2番ホームへ四月九日(サ行)
花の名を教えてくれるAIも「知らんけど好き」とか言ってよね(辰野音子)
物差しを背に刺すように一輪の白いカラーに立たされている(村崎残滓)
咲いて散りまた咲いて散り目眩する そこを狙ってじっとしてる死(エビ山)
君の向く方が海だよ 散る桜背にして結ぶ 右の靴紐(漁火いさな)
花芽吹き春の訪れ感じる日前を向いたら一歩踏み出す(雨宮雨霧)
犬を連れ桜並木をゆく父はだんだん花が似合わなくなる(すずきみなみ)
想像する桜の色はももいろで憧れと恋を間違える春(あきの つき)
青空に映えるピンクの花の雲 儚く浮かぶ春だけの雲(水柿菜か)
あと何度きみと花見をした後に冷えた手繋ぎ酒を飲めるか(伊沖)
ハモニカの部屋それぞれに花の種B♭《びーふらっと》は白い水仙(川瀬十萠子)
街ゆけば雪解け告げる桜もち(七姿ねも)
芽が出れば花の名前を言えるほどあなたと街に染められてゆく(山口絢子)
ただいまの靴底にやわらかくある春ひとひらよ おかえりなさい(奥 かすみ)
季節などお構いなしの恋心 桜は散るし花火はあがる(わたこ)
音もなく散っていくのに何となく君の声が聞こえる気がする(水無月ニナ)
旅立ったあなたはどこでこの春の桜を見るの風になれたの(宮緖かよ)
はらり、らる 散りゆく日々は桜色帯びて東の空に輝く(漁火いさな)
ひいやりと花唇と水面はくちづけを流れつづける水は腐らず(古井 朔)
散るものと知って余計に欲しくなる別ればかりの歌集が欲しい(はるかぜ)
歌だから好きな名前できみを呼ぶハニーねぇまた花見に行こう(ふちかみ)
高速のトイレの花の美しさはきっと日の出と同じ効能(たな)
かなしくて泣けないときも花は咲くなみだをためた光のなかに(月夜の雨)
捨てられず呪いのような思い出を青い桜を描いたきみを(かなしだ)
さくらにはさくらの暦 来るもの拒まずされど媚びないでさく(奥 かすみ)
好きでした。桜吹雪が舞う度に指を数えて春過ぎてゆく(実森詩音)
星にさえ名を伏せさせて花たちは密かに春を産卵している(きいろい)
今年また共に桜を見られたね春を起点にめぐる一年(花林なずな)
3月の駅のその他のゴミ箱に誰かがもらった花束がある(木ノ宮むじな)
花束を抱えて電車に乗る君にどうか幸あれ!と願う行く末(花己)
強風で散りゆく仲間に歓声が上がる世界で色づく桜(ベーグル)
虫媒が成り立つように咲いている花 微笑みは眼で決まるきみ(ぶりきのかに)
蝶々と指させばひら、ひらと落つ花弁は夜のしろき蝶々(睡密堂)
二次会を辞退し帰る夜桜が呼んでいるから歩いて帰る(睡密堂)
雨の日の桜と土手と菜の花と 雷鳴もして春の交響(祥)
ほころびを愛で盛り愛で散って愛で葉のみになれど愛しき花よ(北乃銀猫)
きみといるただそれだけの毎日を花で飾ろう 泣いて、笑って(木ノ宮むじな)
さくらってひらがなで書く柔らかな花びら散ってくらくらするね(谷まのん)
コンビニの柵に誰かがくくり付け置いていった花見の名残(じっくりコトコト)
限定でご朱印帳が埋まるたびピンクの八重の恋は色濃く(夕凪遙)
川面へと送るわたくしたちの花むなしく沈んだ青い春よ(水也)
本当はみんなへ投げた花束が私だけにと思えた 夢だ(山口絢子)
昔祖母から引継いだベルフラワー花屋で再会 また育てたい(いなほ)
風はまだ冷たいけれど花は咲く君の背中を見倣うように(りのん)
阿波弁と母のおかえり花の香をまとってたのだ いまもわたしだ(Ratta)
最近は散ったはなびら拾ってる 泣いちゃう人がいたら困るし(まだ間に合え)
花びらが地面に落ちたそのときにどこかできっと涙も落ちた(竜泉寺成田)
花びらが降り積もるよう君からの言葉は地層やがて栄養(りのん)
スカートに花の迷彩が施され目標を視認駆け足進め(キクラゲ)
さよならは桜のかたち去る人の記憶さやかに舞い降り積もる(りのん)
道傍のスプレー缶を軽く蹴る 桜前線迎撃部隊(雨野水月)
完全な夕焼け空が花となり土へ土へとやさしく翳る(畳川鷺々)
水たまりに落ち重なった花びらが春を焦がれた兵士を偲ぶ(キクラゲ)
花びらの乗車中です春風の通路は開けてお待ち下さい(宮緖かよ)
花のよに生きていきたい咲き誇り誇らなくても静かに凛と(ネコニスケ)
また好きと言い続けてよ花びらが5枚の桜を風に返す(夕凪遙)
ひとつ得てひとつ落として晩春のカーブを曲がる桜とともに(白雨冬子)
道端に遺棄されている桜の子ばかりが見える どこいくんだろ(ひがし銃水)
たんぽぽのぽぽの部分に含まれる春の陽射しを浴び眠る犬(あきの つき)
陽だまりの代わりですが、と神様は箱庭にそっと桜を降らせ(あきの つき)
花びらを頭に乗せて歩く君人かたぬきか化かされたくて(中山 みみ)
あの人は透明な傘だったのに右肩ついていますよ。桜(辰野音子)
束の間の花の盛りにまず学ぶ想像越える時の速さを(るるちびにゃん)
すでに咲き枯れるを知って手折る花美しいなら誇らしい散れ(吉井ヨッシー)
名は体をあらわすという みどりごを傍で見守る桜のように(玉響沙耶)
お花見に膝掛け持参する君の元カノの数聞かないでいる(きいろい)
竜舌蘭が咲いているんだまひるまのドリンクバーを眺めていても(仁科篠)
眼には歯が耳には臍がある夜へソメイヨシノは瞼を降らす(宇祖田都子)
足元に散った花びらかき集め春の死骸を手放せずにいる(すずきみなみ)
優しさは私だけに合う名をつけた花を贈られるのに似ている(萎竹)
慣れないねってすこし笑って黙りこむぼくらの間のさくらの練切り(叭居)
枯れるより散る方がいいと言う君が銀歯だらけになったっていい(村川愉季)
花嵐翻る街櫻色バルコニーではにかむジュリエット(蒔岡 るね)
からっぽになったポケットいっぱいにきみが押し込む母の日の花(六日野あやめ)
おいそこの 酒を飲んでる皆の衆何が花見だ こっちを見ずに(時雨)
咲き誇ることも咲き乱れることも知らず咲ききる道脇の花(わたこ)
一斉に桜が胸を刺してくる心の影を灼き尽くそうと(ムラサメシンコ)
淡色の三色だから和菓子屋で買えばわざわざ桜の下へ(じもぶん)
蕾から産まれる姫の怪綺譚つぶさに語る桜の老木(じもぶん)
それは祈りか絶望かうなだれる白水仙のつま先は夜(よしなに)
やすみなよシロツメクサは微笑んですべてのゆびにまるをつけます(サ行)
飛蚊症デスノート寿命告知めき百歳さくら木のした笛吹く(佐々木ゆか)
息を吹くだけで和音がでるようなあなたに傾いていくひまわり(村崎残滓)
あなたは接続詞みたいにKissをする葉桜が舞い落ちてくる(ゼロの紙)
画面には桜トンネルくぐる人そんなことより奥歯が痛い(宮緖かよ)
軽やかに舞う花颪 口角を下げずにいると決めた春の日(田仲トオル)
桜散る散らないの瀬戸際で上手に降る雨 閉じ込める写真(半)
満開の桜は嵐に散らされて光もうたかた影もうたかた(アサコル)
雪解けの街路樹のもと芽吹くようびゅるびゅるにされたカセットテープ(畳川鷺々)
ご近所の木々にいつもの春がきて今年もくぐる花のトンネル(青色紺色)
才能は他人ルールで決められて花の美もまた他人ルールで(エビ山)
お花見で隣に座った友人が紅葉のころ夫になった(ただの みい)
繰り返し桜が咲いても私まだあの頃に居るいつかの春の(舞風 奏-かなで-)
決まりごと 桜が散ったら君もゆく季節はいずれ僕らを殺す(Kirio)
一輪だけ咲いた桜の気高さよ花弁を撫でる東風《こち》厳かに(アサコル)
見届けた人の数だけ愛されて立っているのね 神代桜(エビ山)
パッと咲き、生まれ変われる気がするよ、春デザインの一番搾り(真朱)
花咲けば宴を開いて酒を呑み和歌を詠った誰かの遺伝子(岡田道一)
何年も桜の盆栽花咲かずあなたも大器晩成なのね(ツキミサキ)
靴音で遊ぶ少女に舞い降りるカーテンコールという名の花弁(まほう野まほう)
塩漬けの春を頭にのせられて衣替えする桜あんぱん(川瀬十萠子)