第20回毎月短歌・2月の自選部門 作品一覧

第20回毎月短歌・自選部門に投稿いただいた短歌作品の一覧です(表示順はランダムです)

[選評結果一覧など「毎月短歌コミュニティ」でいちはやくまとめられています。参加はこちらから]


あ、雪と木霊する声透明で雪の白さが際立ってゆく(りんか

静かなるホームに立って人は皆ひとり 足音は節度を持って(琴里梨央

少しずつ少しずつ思い出せなくなっていく君の歩き方とか(雨野水月

勝負服そのポケットの奥底で冷たくなったカイロを捨てる(あだむ

未来なき卵を割りてきみ混ぜる余生は黄金スクランブルエッグ(古井 朔

お出かけで財布は軽くなったけど笑顔が増えたからよしとする(hsny

制服を着れず仕舞いのあの春を 短い歌でいろどったのだ(里香

春ですね ぜんぶやさしく見えちゃって騙されちゃって幸せな日々(あきの つき

エポックメイキングな激しく揺れるおっぱいのマンガ表現が乳首残像(じもぶん

外国の花の名前をひらがなにしるせばわれのなかに咲き初む(小野小乃々

最初からわたしのものじゃないひとがわたしにやさしく手を伸ばす 罪(にいたかりんご

まっさらなコンクリートに肉球のかわいい印つけたコは誰(青色紺色

彼のこと忘れたいからあの日々を映画と思う 来たれ泥棒(北野白熊

三月に賃上げ決まり懐は豊かになれど米が買えない(ましゃこ

リメイクで吹き替えられた声が違うあの頃私も別人だった(箭田儀一

アオハルに縁がなかった放課後は単語帳との会話で終わる(桐谷やまと

風が奪ったあの花びらが春を待たずに蝶になるまで(ゼロの紙

蜃気楼みたいに記憶が消えてゆく宝物だけ残るのだろう(りんか

もうひとつあなたの顔があることに気づいてしまうその薬指(真朱

脳内で化石となった子どもたちできることなら掘り起こしたい(ツキミサキ

Estate いつもあなたがいる場所を温めておくこの胸の中(納戸青

面倒を積み上げ生きる半分に折ったパスタが張り付く鍋底(みぎひと

君が乗る電車だということ以外何も知らない石神井公園(松たかコンヌ

壮絶な足の引っ張り合いをしてプロポーションが良くなりました(白鳥

ジャムトーストのジャムの部分に火をつけた 綺麗に 慈しむかのように(白川侑

かぶを抜くてぶくろを買う蝶になる読み終えたならカステラを焼く(りのん

眠れない夜に見ちゃったAmazonの誘惑に負け届いた何か(さに。

なにごともないから「なし」と書く日記 起伏のゆるい尾根は続いて(水の眠り

正しさを見たくない日のさみしさに眩しい光のたまの優しさ(ume

図鑑には載ることのない花だけを編んであなたのための戴冠(石綱青衣

母の目の奥にわたしのふれられぬ雪が降ることずっと降ること(メタのおわり

会いたさに車につもったうす衣くずれて桜の花の尾となる(水の眠り

ひび割れた夕飯つくる両の手を 愛と、お日さまだとも感じる(ムラサメシンコ

向かい合う//と\\のほっぺたの熱で今ならどこか焦がせる(こまえり

欠点も愛せるような愛がいい加点していく毎日がいい(睡密堂

青空を掴もうとして知る怖さジャングルジムのてっぺんの風(ホワイトアスパラ

椎茸を食べれるようになったからアナタのこともじきに愛せる(空虚 シガイ

誕生日ケーキの上でロウソクが今年も領土広げてしまう(秋野トウゴ

大切にする 例えば人混みの中でケーキの箱を抱くように(Umi.

しあわせを欲しいみんなで夜空から迷子の星を撃ち落とす夜(たな

ただいまの声音で知れる今日のこと急ぎ夕餉に好物を足す(でち)

ひとつまみ塩が甘みを引き立てるそれでも恋は泣きたくないよ(織部ゆい

軟水でないと買わない水にさえこだわる君がなんで私を(佐為

奪うもの奪われるものおんなじになっていくまで並んで歩く(春永睦月

夜空には見えない星があることを君の胸の奥に見つける(ムラサメシンコ

あたたかな闇しか知らぬ足どりでお腹を蹴って蹴って嬰児(灯志

なまはげに恐怖して泣き叫ぶ子の恐怖をなぜに笑うか親よ(桜井弓月

青年はモラトリアムの世界からログアウトしたkeyは「banana」で(UG)

ごめんねで優しく僕を殺すのに君が泣くのはなんだか卑怯(ぐりこ

みな海を待つしずけさにひるがえす風切羽は傷に似ていた(石村まい

汚れてもいい、私たち泥濘で眩しいほどにステップを踏む(あきの つき

どこへにも辿り着きたくなくて乗る環状線にも終点がある(萎竹

友だちの猫の訃報を受け取った最期の様子できみを想った(北乃銀猫

矛盾とは限らないのよグラタンは凍っているし焦げてもいるの(村田真央

電話って五十年後もあるのかなクジャクは羽を広げてるかな(宇祖田都子

Tの刺繍誰かのイニシャルだったものレースハンカチ電柱にかけ(綿鍋和智子

王冠を食べ尽くされてパンがない生きがいもない市井のわたし(松たかコンヌ

風に乗りやってくるのはソプラノのエーデルワイスいつもの時間(

目を閉じて布団をかぶる朝の五時闇を重ねてよい子をやめる(早春

ときめきと不安でふくらむパンケーキまた新しい春になります(真朱

ソフトシェルクラブを噛んで考える 「都合の良いタイミング」について(しみず

どれくらいひとりの夜を過ごしたのレンジの中で冷めた鰆は(北野白熊

改札を抜ければハチが待っている 弾む心と帽子と鞄(

コツコツと積み重ねてく焦燥も私らしさだ愛していこう(こまえり

ここでなら愚痴も秘密も 琴線に微かに触れた脆い光も(未確認

Where is the restroom? と言えばすぐ優しさくれるこの星が好き(瑞波草

名前ならあなたに付けてほしいから星座になんてなれなくていい(宮緖かよ

濡れている観覧車せつなさを運んでる互いに光るものなぞりながら(ゼロの紙

重圧のかかることなき日の朝のトーストの香にちょっとふくらむ(鯖虎

呼応するさくらひとひら礼をする歩きはじめた永訣の日よ(水也

<さみしい>と<さむい>は近い感情で便座も温もり必要とする(萎竹

来年も 穏やかにまた 迎えたし 世界の動きに 心揺れつつ(ほんみつ

愛されていたのすべての方角が南となれる北極点で(はじめてのたんか

致死量の制汗剤は汗だくのうぶな少女の少まで流す(瑞波草

苦しくて何をやっても効かなくて龍角散だけが減ってゆく(空虚 シガイ

くらげって儚いよねと呟いた君の右手をぎゅっと握った(hsny

心中を突いたら蛇が出ることを知らなかったと言わせませんよ(にいたかりんご

くるしくてプールサイドになったのに一生きみが見学中だ(松たかコンヌ

明暗を感じ揺蕩う海の月 常世導く燈火のように(新井田歌子

愛なのか執着なのか成れの果て、きみだけどうか愛と呼んでよ(藤間あわい

貝のうちに真珠ふくらむ春の日のどうしようもなくきいろい眠気(石村まい

寂しさは正しく人を交わらせたましひ二つ削らすばかり(朝路千景)

角のとれたあなたの書いた風の字がゴリラの笑みのようだったこと(白雨冬子

満ちていき引いていくさまをみている ひとのなかにも海がきこえる(ムラサメシンコ

前ならえしている星の真後ろで小さく腕を伸ばしてみたい(春永睦月

僕よりも輝く君を見るときに消せない言葉「しねばいいのに」(井上 真改

弱虫のままだよあふれそうな水湛えてくらげたぷんと揺れる(青野 朔

厚揚げを煮含めるそばで本を読む心が少しふくよかになる(早春

夢叶え歓喜するキミ笑うボク 肌で感じる理想と幻想(京本らき

機織り機みたいと微笑うミユちゃんを引き寄せられぬMYHOMEGYM(白川楼瑠

観覧車、スワンボートは2人乗れる 記憶のきみと乗るのは嫌い(わかば)

永遠の別れ、などないかもしれず たとえ肉体が朽ち果てても(佐竹紫円

鱗ひとつ剥がれる度にあざやかなひかりが失せる 生きるさみしさ(せんぱい

別離などどこにもなくて甘いものたべたいだけできみが食べたい(水也

かなしみは光にとけてゆれるから思わず腕をのばしてしまう(月夜の雨

乳くさき手をまっすぐにわれにむけこぼす笑み見て生きていること(つくだとしお

贈り物なんだと気づく遺影の服派手だなあって笑った後で(10

墨ぽとり半紙ににじむ黒き花 心に闇がじわり広がる(稲子

あの夜の硬いあなたのこえを抱く、涙は花でないと気づいて(久我山景色

やすらかになりたいですね いつまでも クラゲ水槽を観続ける人(しみず

手を取れば違う未来もあったけどきみに出会える今で良かった(宮緖かよ

追熟のための亡姉のひと手間が桃を「わたしの桃」にしていた(10

開かれるまでずっと闇 絵本にもじゅうろくページぶんのくらやみ(ほしのひかり

原色のパレードが征く蠢いて取り巻く人もそのものとして(UG)

節分で追い出されたる鬼たちの囲む焚き火の賑やかなこと(アゲとチクワ

友達がいなかったから俺だけで死体を埋めて一人で生きる(仁科篠

毎日が旬だと言い張るミニトマト求められてる自信が眩しい(早春

アツアツの小籠包が口の中にあって革命どころではない(汐留ライス

お花見の穴場を映すテレビ局もうそっとしておいて下さい(椿泰文

ω《オメガ》って猫のきんたまみたいだと研究室でリケジョのたまう(木ノ宮むじな

くだらないことで苦しむのをやめられない僕の口は血だらけだ(

水飴で無数の欠けを繕った心は嘗めるお守りになる(瑞波草

愛情の不払い分を督促す延滞分が糖分になり(でち)

戦闘を始めるように半袖はポニーテールを後ろ手に結う(木ノ宮むじな

わたしって悪い大人だ別腹と言い訳をして頬張るパフェよ(ホワイトアスパラ

許される範囲の自由享受してたっぷり絞るポテラサのマヨ(茶葉

内側の激しく続く運動のため眠ったこともないダビデ像(ほしのひかり

稲妻に打たれてみれば私たち実りの秋が来るのでしょうか(北野白熊

セントラルヒーティングでも端っこの部屋は寒いね写真を撫でる(中村祐希

タコ型のすべりだい ねそべり ねむる 午前三時の宇宙遊泳(しみず

トマトにはマヨネーズだと譲らずに塩派の君とうまくやってく(さに。

あなたのじゃない柑橘系の匂い これか、伊予柑の「予感」の部分(佐為

目覚ましが鳴っても起きぬ私ですそうです貰い手がいないのです(箭田儀一

とめどなく雪は海面《うなも》に溶かされて愛することに果てのないこと(よしなに

完璧なショートケーキをゆっくりと崩すこんなに愛してごめん(あきの つき

白鳥は水に浮かんだままねむるそしてそのまま冬の朝逝く(小野小乃々

寂しさを一年で割る 一日の孤独レベル五等星の僕(アサコル

じゅんわりと瑞々しい頬桃色に染まったあなたの愛らしさよ(藤間あわい

近代は「私」を発明した後に孤独の蛸壺仕掛けていった(つくだとしお

画角には入りきれない思い出がいま群れをなし翔び立ってゆく(山口絢子

やがてこの日が傾いて物憂さに泣くのだろうか 咲く花の下(

最後までお互い被害者の顔をしてチョコレートパフェしずかにくずす(箭田儀一

もう叱るひともいなくてカルピスの濃度は自由と孤独の濃度(メタのおわり

人だったことを忘れて私たち砂粒みたいに寝転んだ海(宇井モナミ

至らぬとわが身怨みつ傷つけて「すべてはわが糧」気づくこの朝(つくだとしお

左胸あたりでぐしゃり音がした 裂けたトマトの種は生きてた(奥 かすみ

何度でもミートソースをつくる夜、あなたの歴史を上からなぞる(久我山景色

舞い落ちる桜とともに消えていく君の姿はあの頃のまま (雨宮雨霧

終盤にコーンフレーク掘る頃はもう飽きているパフェとその日に(村川愉季

海の見える丘に立ち手をひろげればひらく 世界はすべてここだよ(栗原馴

奥底に沈めた鬼が浮上する千切りの速度速まっていく(ZENMI

連絡に一喜一憂してしまう自分が嫌いピーマンよりも(静麗

芽を吹いた双葉がたんと呼吸するだから四月のぼくは酸欠(たな

やけくそで「俺が春です」という顔で出勤したらハグされて花(サ行

降りしきる花は祝福 今わたし幸福になる鳥になりたい(水也

書けること書けないことが降り積もりあなたの街を銀色にする(石綱青衣

手触りを確かめてすぐ呑み込んだ言葉の棘が今も抜けない(茶葉

嗚呼、僕がオムライスを作るとチャーハンになるのは神の戯れですか?(京本らき

ぽかめいて、でもふわふわのコート着て遅い帰りの私を護る(中村祐希

猫としてはじめましての春が来て路地裏に吹くわたしの自由(奥 かすみ

なつかしい怒りのようだㅤむらさきを燃やしながらに孔雀の正座(石村まい

ブランコが揺れているのはさっきまであなたがここにいたせいにする(わかば)

閉館後の図書室にねむるどの時の誰の童話もあなたのために(畳川鷺々

今日もまた「楽」や「時短」で検索し作るごはんに生かされている(さに。

雨の日は狂ってしまいやすい音 鍵盤のような背骨をさする(石綱青衣

またひとつ重ねるマスクあなたにはうつしたくないかなしみがある(葉和遊

思い出は 四季おりおりに 織り込まれ 私はあなたの 季節でしたか(里香

三月をこころに描くときいつもただまっすぐに佇むガーベラ(佐竹紫円

向こうから送ってほしい あなたの柩に入れた白紙の便箋(Umi.

さくさくと降りそそぐその言葉たち武器でもあって守(も)りでもあって(

瑞花融け雫となりて雪代に 真珠のピアスきらりと揺れる(新井田歌子

青汁を一気に飲んで宿敵を倒したあとの勇者のつもり(奥 かすみ

海を見た、屋根の合間のひとひらを瞳にのせて潤ませておく(青野 朔

油抜きするためだけに沸かす湯の湯気をも含むわたしの二月(宇祖田都子

首の皮一枚繋がる幸運で生きてきました感謝しかない(山口絢子

戻らない記憶ばかりが瞬いてきみの涙は星砂になる(月夜の雨

海原の腕に抱かれ漂いし ラッコが寄す処としている昆布(新井田歌子

わくわくと口に含んだおはじきの罪の風味を舌で転がす(こまえり

ままごとのトマトとりんごくっついたやっと出逢えた二人みたいね(織部ゆい

切り花と愛は似ている実にならず水に眠った祈りのようで(朝路千景)

甘い嘘あなたはどこに隠したの フォンダン・ショコラを切り分けてみる(碧乃そら

この中で多分ヒロインだと思うトマトをサラダから取り分ける(睡密堂

VHSにはたしか祖母がいてもうすぐ声を探せなくなる(アゲとチクワ

かにかまの籠盛り抱え差す夕日すり身すり足よける横歩き(じもぶん

君に会い心に咲いた花々を家に着いたら瓶に生けたい(月瀬 葵葉

群衆を花束であると仮定した場合のリボンの結び目に立つ(村田真央

大好きな人に別れを告げました。ここを今から出発地とする。(櫻井さん。

共感?配られていたメニューから同じサンドを選んだだけだ(UG)

望遠鏡で金星を覗いたら金星からも覗かれていた(ただの みい

平安の日記の残るこの国の月を詠む人千年後にも(椿泰文

友達の数より少ない祝福とショートケーキの立派な苺(南千里

おうらみ申し上げます、と言ったフィロストラトスの目 夕焼けの色(

すきだって伝える手段も失ってあたしはきみの図鑑になった(宇佐田灰加

二重線引きたい僕の履歴書に三本増やし五線譜とする(南千里

おやすみと眼鏡を置いて電話する戸惑いつつも海境遠く(古井 朔

三日月もいつかはまるくなってゆく 信じて待つこと 目は閉じぬこと(琴里梨央

この星を落としたひとが泣かないですみますようにすみますように(宇佐田灰加

きっと今日きみはラプサンスーチョンを 煙たい夜に紛れるために(Rhythm

逃げ切れる場所も見えないままに鉄の階段昇っていくよ(春永睦月

あまりにも苦いさよならだったからオリーブオイルで春と和えちゃう(Umi.

これまでにもらった愛が光っててどこへ行っても僕でいられる(てと

のど飴に生まれ変わって冬風邪のあなたに誤飲させてあげたい(雨野水月

板チョコを割らずに囓る 前だけを向かなきゃいけない決意の日には(佐竹紫円

現在に私は生きておりません遠い過去からあなたを見てる (雨宮雨霧

未来などあまりに遠い方がいい 翻りなお白いセーター(納戸青

何度でも履き潰す靴 翼など持たぬぼくらの軌跡となって(宮緖かよ

あぁ、これは、生のホルモン丁寧に切り取られてた父の大腸(ツキミサキ

分かれてもすぐまた交差する道を優しい君が作ってくれた(織部ゆい

スーパーで安くなってた桃を剥く素手でこころはひねりつぶせる(萎竹

身を縮め寒波をゆけば道の端にすっくと咲いた日本水仙(桜井弓月

願わくば違う夫と同じ子と暮らすパラレルワールドに生《い》く(稲子

海のなかの月は傘をさしている 宇宙で雨は降るのだろうか(佐為

またひとつ社交辞令が飛んできた全部実現させてやろうか(ただの みい

左右違う靴下だけど可愛いと言われる場所に遊びに行こう(インアン

地球語で呼ばれなかった星たちはきっとささやき声で歌った(せんぱい

冬服で常に定員オーバーの三段目から春をとり出す(青色紺色

みんなしてみんなをしてるみんなにはひとりひとりに本棚がある(仁科篠

湯船へと体を浸す瞬間の安心感は諦めに似て(白鳥

鍋の中かたりかたりとゆで卵予感通りにLINEが届く(秋野トウゴ

この代で絶やすと決めて名乗る瞬間《とき》ぼくの名はほとんど箒星(10

オハヨーが言えなくっても九官鳥あなたのことがずっと好きだよ(きいろい

島々に春を告げる蜃気楼 海の向こうへ巣立つ日は近い(はざくらめい

寝る前に今日に×付け電気消すこのカレンダーにビンゴは来ない(北乃銀猫

筋のない道行だから我が生を猫の散歩と呼んでいるのだ(灯志

泣き声の大きな方が正しくて寡黙な真珠はゆらゆら揺れる(ume

手で覆うバターのかたちもどらないひと肌程度で不可逆の油脂(綿鍋和智子

鍵穴を必要としない生き方も多様性には含まれますか(白鳥

あひるちゃんお風呂に浮かんでぴよぴよと沈めた夫の真上を横切る(叭居

かさねづけしてきたようでどこからが汚れか知らぬあなたの睫毛(綿鍋和智子

「猫型」が枕詞になる国で明るい明日を信じる僕ら(みぎひと

レイトショー開演中の誰もいない楽屋みたいな地下鉄の駅(白雨冬子

カビそうな餅をレンジにぜんぶ入れ大変なことに!大変なことに!(汐留ライス

玄関のフローリングの冷たさをどうして頬が覚えているの(村田真央

東京でまたきみとする隠れんぼ、こんどのきみは見つからないのに(わかば)

カフェランチ4等分の幸せをひとり頬張るクアトロ・フォルマッジ(古井 朔

顔と首 塗った残りの乳液を 無限に吸い取るヒジヒザ砂漠(未確認

溶けやすい夜を羽織って踊ろうねオランジェットのはだけるように(夏谷くらら

最初から苗字が戻ると知ってたら油性ペンなど使わなかった(汐留ライス

ハローハロー、聞こえてますかここは海私はずっとうたいたかった(中村祐希

家を出た数と帰宅をした数がそろわない人たちだけの街(宇祖田都子

既読から返信がない 立春を過ぎて寒波が居座る模様(真朱

青白い顔をしてるってモノクロでわかる実験4号PV(栗原馴

テロメアを長くしましょう神さまは灯台の火を消すだろう 闇(よしなに

色褪せた空前絶後の碧石を左右2個ずつ握らせておく(非鋭理反

泥水に汚れた椿拾い上げ食べてあげるの愛も悲しみも(アサコル

鴎らがポップコーンだったらいい見えるすべてが映画だといい(ZENMI

昨日より寒い理由を教えつつ子とよく晴れた空を見ている(梅鶏

鬱の字にたたずむ木々をながめおり 病名がつくことのやすらか(メタのおわり

朝焼けにさらされている首筋をトーストに見立て、かじる おはよう(ゆっくり生きてます

満票に一票足りずその記者と飲みたいと言うイチローの笑み(椿泰文

絶交と仲直りとがセット売りされていた日が確かにあった(茶葉

さよならの芽を摘んでおく育ったら君はどこかで咲いてしまうし(きいろい

冬木立抱えて眠る古墳群 眠れ古墳よ眠れよ埴輪(

長年を冗談ばかりで積み上げて 私は君の髪さえ結えない(里香

光ってるとこだけなぞる手のひらの皺も星座も血液型も(インアン

久しぶりの菓子箱はまるで玉手箱 広がる空間 無常を思う(未確認

教室の狭い世界で一年を無事に終えたことを讃えます(はざくらめい

暗闇に犯されたなら光れない27時の月長石は(よしなに

数知れぬまなこの踊る風の夜は亡母の目を借る三色菫(小野小乃々

夢を見た君が遠くへ行く夢を目覚めて隣で眠る君を抱く(櫻井さん。

脱がされる口実を待つ板チョコの気持ちでハグに応えてみたり(めめんと

グリコでもパイナツプルでも届かない距離にあなたの心は(ホワイトアスパラ

罅割れたきみの茶碗は継いだけど ぼくはこころはかわきひびいる(井上 真改

楽園で猿とバナナを取り合って夜は星見て一緒に眠る(ただの みい

五つあるピアスホールは塞がって若気を笑う星座になりぬ(宇井モナミ

知恵の実を食べてこんなに愚かなら食べずにいたらどんなありさま(桜井弓月

先頭の車両に乗ってこの愛の震源地から逃げ帰りゆく(あだむ

すきになってすきな人の体温知りました花びら1枚落ちてゆく(ゼロの紙

街中がピンクに染まる春が好き さくらオーレのホイップ、ふふふ(桜咲

百円で買える古書たち それぞれが売られるほどには大切だった(はじめてのたんか

出勤中ふと思い出す放課後のぬるい空気のかけがえのなさ(hsny

手放せば飛んでいくのを知っていてあなたの言葉は全部風船(にいたかりんご

でもだってだってだってだってだって愛さないじゃん 一マス戻る(朝路千景)

近くまで行くのにちょうどいい服で近くてちょうどいい桜まで(梅鶏

トレモロとハーモニクスに誘われた弦から星の声が聴こえる(Rhythm

ほんのりと夜色を帯び蠢いて幾重も母の手のような波(せんぱい

今はなき書店のカバーがかけられた詩集の荒野に十五歳でいる(青野 朔

サイレント映画みたいに声のないあなたが記憶の中で笑った(ぽりぐらふ

夜 ひとつひとつ秘密を星にして過ごしましたね ねえ、観覧車(葉和遊

「またね」っていつかのきみのほほ笑みがひかりだすみたいに天気雨(月夜の雨

ユニコーンの初めてのキス 長い角ぶつけて笑いあったりなどした(琴里梨央

溶かし飲むキャラメルプリン風のチョコ人生風の時間のなかで(非鋭理反

たよりない肩甲骨をふるわせて鳥瞰的にみる夜の風(畳川鷺々

ミッションは地球と会社救うことついでに僕も助けてよ、愛 (秋野トウゴ

混色 あたまのなかで燃やすもの流行りのパステルちょっと黙れよ(畳川鷺々

とにかくなんか焦っててメリーゴーランドの馬に鞭を打ってる(雨野水月

カーナビの画面全てが青色で「海だ」自由の定義について(ほしのひかり

もう塩も砂糖もかけず食べられるトマトも僕も大人になった(とんだ一杯食わせ者

ピーマンを食べる子供となるように受け入れていく東京の水(はじめてのたんか

ゆうれいに乗りものがあるなら海月。淡いひかりをカラダに透す(白川楼瑠

直角の角に当てがう緩衝材真面目はきみを傷つけますか(りのん

三月の君の肩から滑り落ちた薄桃色を浮標にしている(たな

切なくて、冬とか言った舌の根が乾かぬ内にすたみな太郎(鯖虎

もう着いたその一言で改札に五感全てが吸い寄せられる(あだむ

飴が苦手なんです、舐めきれなくて そう言ってばりん ばりん ばりん(

V体の恒星 無数の惑星を照らして沸かすYo宇宙be(Youtube)推せ(インアン

さみしいは一人が苦手 たのしいのいつも後ろにくっついてるね(ume

穏やかな素行不良としてメロス以外の太宰治を読んだ(めめんと

医師はいま命の期限告げんとす 聞かん聞かんと耳鳴りがする(稲子

あなたから奪った熱で思い出すわたしが海であるということ(てと

行き先は北か南か木星か あなたの無茶につきあうつもり(青色紺色

太陽に皆勤賞を差し上げます休まず照らして1番えらい(ZENMI

人慣れて飛びもせぬ鳩くたびれてときめきもせぬ胸に抱きぬ(鯖虎

さっきまで陽だまりにいた君の背は春の依り代 抱きしめてみる(ぐりこ

入道雲みたいな冬の雲見上げあの日のソフトクリーム思う(南千里

日本語の曖昧さをただ笑うだろう綺麗ですねと言われて月は(宇井モナミ

化石だった記憶を時折よび醒ましアスファルトは鈍く光をはなつ(小仲翠太

ならいっそとことん酷い人でいてあの言葉すら忘れていてね (

南極のオーロラの香は蝋梅を手折ったあなたの右手の香り(久我山景色

咲くことさえ罪であると燃やされて燃やされてなお咲き誇る桃(アサコル

木彫り熊やっぱり鮭を咥えてるたまには鮪にしても良いのに(京本らき

わたしにはわたしの終わりがある 桜 環状線を途中で降りる(宇佐田灰加

肉まんを2つにわってはんぶんこあなたと食べた大切な味 (雨宮雨霧

始まれば終わりは必ずあることを散る花に見るこの国が好き(山口絢子

オパールの指輪 夜空にかざしたら月が流した涙のように(りんか

誰もみな心に毒を飼っている桃が秘めもつ種子の青酸(灯志

目がまわる世界がまわる この星の自転で相殺してくれませんか(Rhythm

白米の奥の甘さを噛みしめて膨れあがった胃を飼いならす(村川愉季

呪うほど好きになってよ僕のこと逃げないくらい束縛してよ(北乃銀猫

これからもすべてが死後の前書きでしかない日々のひかりを拾う(てと

バースデーソングを歌う店員に無関係だが拍手を送る(桐谷やまと

生き延びた死に損なった毎日をいつか抱きしめ星になれたら(藤間あわい

偽善っぽい青に囲まれかしこまる他人のわたしの証明写真(小仲翠太

苺ジャム煮つむる夜はあまやかな月かげ夢のごと恋のごと(碧乃そら

立つ鳥のまなざしにあお み冬つく音にわずかに羽をひろげて(納戸青

ウィスキーボンボンベースの音重ね舌の温度で溶けていく夜(ツキミサキ

夕方の半額シールを待つカート遊覧船のゆらぎにも似て(水の眠り

おかえりの際はボタンを押してからきいろい月へお越しください(葉和遊

もくもくと恵方巻きをたべるきみツノが小さくなってかわいい(サ行

神さまが愛にかたちを持たせたの とろけるような甘い桃の果(月瀬 葵葉

祝日に働いたので本日を呪日《のろいび》として肉を捧げる(でち)

耐えかねて生まれ変わった初夏の庭あなたであった芍薬に会う(夏谷くらら

水面は凪いで光を照り返す許してないよあきらめただけ(りのん

雨上がりやわく波打つ子の髪は君が遺したYの遺伝子(サ行

いつだって誰かの息がくるしくて天動説が少しいとしい(夏谷くらら

魂をやわらげてゆくコンキリエ一人の夜にほつほつ茹でて(ぐりこ

艶やかに手繰り寄せくる手をほどき台から降りる 今はまだ まだ(井上 真改

セーターは裏返して干すディスコとか行かないことを許せたわたし(みぎひと

生産性高いでしょうか仕事場のトイレで乳を搾る私は(木ノ宮むじな

入院は季節の一つ あの夏の代わりにずっと挟まったまま(めめんと

雪ならば東京に降る雪がいいただひたすらに愛してほしい(睡密堂

なりたいねアップルパイに 大切な君を包むの傷もまるごと(月瀬 葵葉

約束が果たされる日までの距離をくどいくらいの愛で埋めてく(空虚 シガイ

このパン屋パンがないじゃんパンみたいだけれどぜんぶ佐々木健介(白雨冬子

仕方なく大人になったライナスが毛布代わりに引き摺る夜空(きいろい

飛行機は金星のように煌めいて外つ国の夜をまっすぐに飛ぶ(叭居

踊り子は止まれば死んでしまうでしょう、踊り子になりたいとおもうよ(白川楼瑠

一年は続けると決めたあの日から僕の物語が始まった(はざくらめい

もうなにを恨めばいいかわからない夜 なまぬるい湯豆腐を食む(仁科篠

人生と離れたくってカフェへ行き生保の声が聞こえて人生(アゲとチクワ

ひとまずは課題を横に置きやって2ヶ月先の予定たてゆく(非鋭理反

テーブルに咲いてた虹を連れ帰りしばらく日々に色彩を足す(村川愉季

フィクションでいいよこの世の悲しみはポップコーンにして食べるから(桐谷やまと

花びらが舞い散る中で祈りましょう、やがて火になるものだとしても(白川侑


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