第22回毎月短歌・4月の自選部門 作品一覧

第22回毎月短歌・4月の自選部門に投稿いただいた短歌作品の一覧です(表示順はランダムです)

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この夜に孤独が囁いたとしてもひとりでないことを知っている(佐竹紫円

主題歌が流れるような雨だからバスが来るまでスマホは見ない(アゲとチクワ

壁越しに聴くお隣のYouTube知らない曲のほうがやさしい(スーパーはるる

極彩色のペンギンたちと過ごすバッドトリップ0泊プラン(水無月ニナ

宅配や回覧板に背を向けて糸が降りるの待つ池の底(たな

来世では仏花ではない花束に生まれ変わって羽目外したい(谷まのん

黒かった白い髪の毛撫でながら愛していたと言葉にはせず(ムラサメシンコ

透明な嘘を逃がしていくようにプチプチを押すきみの両手は(奥 かすみ

世界だったもの、星を煙たく思うこと、きみは背骨のフルート奏者(tanaka azusa

壮絶な結論として春 蛹とは溢れなかったポタージュのこと(川瀬十萠子

繰り返し沈む夕日と違うから火を点けないで線香花火 (月影晃

ひいやりと花唇と水面はくちづけを流れつづける水は腐らず(古井 朔

短歌などやめちゃおうかと壁に投げ跳ね返る文字また並べては(うとか

好きだった 距離を詰めずに見つめ合う葉桜みたいにわらう僕らは(白川楼瑠

手放していい夢があるレプリカのヴィーナス像もあんなにきれい(夏谷くらら

傘の字は人が4人もいるけれど僕の傘には1人だけだよ(スーパーはるる

ハナミズキ 擬態のカラダほころびて花の部分を曝す五月よ (白川楼瑠

立ち漕ぎで月を蹴るには背が足りない ブランコの上嗤う満月(夏海

当然の権利みたいに窓際のぽかぽかのとこ猫は丸まる(青色紺色

太陽も街も知らないサングラス海に連れ出す日まで待ってて(せんぱい

帰省してレコード棚のジョン若し今も戦禍に消える五線譜(椿泰文

図書館中のバッドエンドをかきあつめ食べておくから幸せでいて(村田真央

ねむってもねむっても夜てのひらをすべりおちてく葡萄のにおい(夏谷くらら

呼んでみたかった気持ちと遺されて父の子に成る私、おはよう(10

空を飛び君と最後のキスをした色鮮やかに命散るまで(雨宮雨霧

食紅で色を添えてくれませんかアナタを想い流す涙に(空虚 シガイ

神だってウソをつきたい日があってたとえば晴れた日の雨のこと(竜泉寺成田

透かすため膜や覆いをぬがすより見透かされない衣装を纏う(Takaaki

淋しいね
花散り果てし
桜木に
問へば応へる
「俺は、これから」(匂蕃茉莉

歯軋りで摩耗しているエナメルのざらつきがまた心を削る(水無月ニナ

まさかこのおれがあややの曲聞いて涙ぐむ日がやってくるとは(藤瀬こうたろー

便箋の音符みたいなきみの字が余白の白をさくらに染める(月夜の雨

タンポポで花占いをしてみよう答えを出すのは遅いほどよい(紅生姜天ひやむぎっ

夢の中 やけにリアルなきみのいてそのまま住んでしまいたくなる(宮緖かよ

でもそれじゃ全米バナナ協会になってしまうけどほんとにいいの(仁科篠

関係に名前が増えた夏きみに私の、私にきみの残り香(あきの つき

私の辞書にあるあなたの名前 意味は人生。愛。または世界。(

ふたりして黙った夜はサテライト 脱出ポッド 国境が近い(右手のハンマー

おそらくは産まれてこない我が子らの名を考える春のきまぐれ(村崎残滓

人生にあったらいいな効果音 運命の人来たら教えて(うとか

咲いたときいつかは枯れる運命に花は恐れをなしたりしない(北野白熊

あなたを浮かべる月と空にはあなたの足が浮かんでる(

病床のホットミルクの湯気ふかくこの世はどこから夢なのだろう(メタのおわり

壊れ物注意と聞いてなかったよ 心の破片を屈んで拾う(さんそ

作業場のテレビはグルメ我々は四百円の弁当を食む(匂蕃茉莉

モビールのテトラは泳ぐカーテンの波に時おりさらわれながら(宇井モナミ

たんぽぽの賛成多数で可決した今日は絶対なにもしない日(きいろい

怪獣を倒して帰る朝の道 反対車線渋滞してる(宇祖田都子

この胸の痛みは消えてくれるのかアイスクリームじゃ間に合わないな(桐谷やまと

空気など一切読まぬ君だからいつも書き順きっちり守る(北乃銀猫

ああそれはエグイっすねと笑ってる後輩くんの笑顔が眩しい(桐谷やまと

じゃないほう芸人さんやミュージシャン好きになりがちですけど…なにか?(青色紺色

駄菓子屋の潰れた果てに人も無く留まる霊も無くただに草(鯖虎

足音のリズムを拾い走り出すラブソング きみだとわかるから(ムラサメシンコ

ピアニカの蛇腹に息を吹き込めば思いのほかにさみしい音色(水の眠り

指を折り韻律数え短歌詠む「ポスト」ボタンをそっと押す勇気(よいしょ上手の高木さん

サボテンも育てられない生活の隙間で育つじゃがいもの芽は(りのん

見えぬものを言葉に表してきたのなら
果てない思いもいずれ名がつく(フラ子

ぬくもりは痛いんだった 傷つけるだけだとしても抱きしめていた(てと

あなたを愛するこの国と月はあなたの姿で(

美しくない強くない正しくない命 よろこびの季節を走る(えふぇ

泣きたいよ思わずツイートした言葉やさしき通知がひとしきり降る(つくだとしお

ぴったりと真横について歩いても見えない壁に隔てられてる(静麗

徹夜して君と話した帰り道 にゅうめんくらい優しい気持ち(実森詩音

木々寄れば己の形忘れ去り森は静かに個性を奪う(ひなとと。

躊躇なくいくらを選ぶその腕で私を連れ出してほしかった(箭田儀一

油絵を描く人だった 山桜 青い影ごと抱いていたいよ(納戸青

鴨の子に「可愛い」と言う横顔で君は「消えたい」と言って、それだけ(10

妻に手を出した男にそっくりな身分証明書を拾い、今(竜泉寺成田

あす家を出ていくきみにできるだけいつも通りに揚げる唐揚げ(木ノ宮むじな

指先に季節の花を忍ばせて花束代わりに中指立てる(別木れすり

肩叩きするフリをして指先で君の背中にスキって書いた(織部ゆい

燃やしてよ 私自身を薪にしてあなたの夜を照らしてあげる(にいたかりんご

花束を前カゴにいれ漕ぎ出せば私は(春の使者)になってく(りんか

眠る木が目覚める青い夜明け前 漕ぎ出す舟が入り江離れる(

寝過ごした恵比寿に全部置いてきた夢とやる気と今週のジャンプ(まつさかゆう

鳥根県島取県に郡馬券
おそらく
平行世界を開けた(無常観装置

時期外れ霜降る暁凍る桜寒さに耐えて咲き匂ふ静寂(渡愛奈

ロケットを切り離すたび少しずつ好きじゃないって時間がふえる(きいろい

なにもかも嘘だったとして行く水の過ぎ去りしプロフィール帳の星たち(四辻

銃声の後もう聞けないメロディを流すウェスト・サイド・ストーリー(綿鍋和智子

ストローはまっすぐこちらへ折れまがりだけどわたしは許せないのだ(きいろい

ちょうど良く振り向くきみは人混みで聞き分けているわたしの足音(真朱

桜とはただの墓標だ散る度に君とはぐれた春を数える(さんそ

君に触れ同じリズムで拍動を刻めるようになれば良いのに(

その瞬間たしかに私は海だった海峡として繋がれた指(しみず

二階から飛び降りた君 幽霊になりきれなかった八月、真昼(夏海

ああなんて僕は不幸なのだろう 口にしてからじんわり光る(白鳥

それぞれの窓に収まる夕焼けが絵画に見えたあなたとの帰路(てと

こんにちは!「死にたい」ばっか言う口にとろろ昆布を詰めにきました(おもらし

そのような都市の葉脈ほんのりと血管の浮くような路線図(

さっきまで海だったものさっきまで人だったもの花となり咲け(沙々木キハム

開け方がよくわからない菓子の箱みたいな君を眺めていたい(空虚 シガイ

作業用BGMを最後まで聞けた試しがない 扇状地(雨野水月

超ロングロングドラゴン作ってた俺をつついた君「見て、ピアス」(四辻

錠剤を呑み込むように今日は過ぐ明日も一人その次もそう(辰野音子

アスファルト突き上げる草は濃い緑まねて緑のブラウスを着る(水の眠り

美味しいは美しいこと菜の花はスープの中で青をほどいて(インアン

春雪に濡れし枯れ葉の手ざはりを確かめしのち鴉は立ちぬ(畳川鷺々

わからない事が多すぎ世の中はバナナのナナナの角度で曲がる(ツキミサキ

想い出を綺麗なものにしたいからきみにさよなら、春雷が鳴る(りんか

ごぼうだけ買いにきたのに友だちの友だちの鍋パーティーにいる(白雨冬子

ティーバッグ深く沈める 王様は私 ただ一度きりの命よ(えふぇ

その場所がバス停だったと分かるのは五月が藤を咲かせたからだ(村川愉季

ダンゴムシ的にころがる靴下も習性だろうキミという種の(奥 かすみ

人類よ全ての花を解放せよ 声をみそら高くひびかせて(えふぇ

百年も生きてしまうと考える日々は余白を持て余してる(奈路 侃

影、ひかり、話した事、あったっけひかり、影、影、胎内の不快(tanaka azusa

世界だったもの、星を煙たく思うこと、きみは背骨のフルート奏者(tanaka azusa

そうだねに込められているましい失望と愛、ずっと四月だ(tanaka azusa

着脱ができるタイプの恋なのでいったん春の風で乾かす(村田真央

大丈夫大丈夫だと連呼する今日も誰かがついている嘘(さに。

「死にたい」ともっと気軽に言えたなら翼生やして生きられるのに(桜井弓月

五月病なのかもしれない症状とどこかのんきにバスを待ってる(奥 かすみ

馬鹿だからわかんねぇけど半チャーハンって半分よりも多くねぇかな(汐留ライス

きみが好きってきみは言うけどそんなのはわたしが生きる理由にならぬ(綿鍋和智子

夜窓に濁った目をした男居て俺はいつからこんなんだろう(藤瀬こうたろー

ひと息に殺したくないときもあり苺をちびりちびりと齧る(さんそ

夕陽見てきれいだねって言う母は幼い頃のわたしを見てる(北乃銀猫

青空に高山植物追いかけて光はいつも形を変える(椿泰文

東京がふるさとになる僕だって秘密にしてる絶景がある(桐谷やまと

西暦を元号にして母が生む平行世界「昭和100年」(竜泉寺成田

蜂蜜がかたむくような静けさで死んでしまった夢のあること(村田真央

ねぇケセランパサランケセランパサラン妖怪好きなあの子に会わせて(ツキミサキ

狂気こそ愛の証であるように枝の先までしなる夜桜(山口絢子

ひたすらに陰キャでしかない思い出をナイトプールに流してみたい(水無月ニナ

ひとつだけ背を向けているどんぐりのようなあの子のノートの落書き(叭居

手帳にはもう書いてあるディナーより千年後って約束をして(納戸青

指先が甘味に触れては離れて頑張れ自分ダイエットだろ(須藤純貴

君たちはしずかに寝るまで「おやすみ♡」を十六回も言いました(月)(サ行

二段階右折のような僕だけど必ず風をおこしてみせる(アゲとチクワ

飲み込まれた新幹線が夕立のアカマンボウをぶち抜いて行く(白雨冬子

その絵具の真白は毒と聞かされて背景に描く百合の群生(川瀬十萠子

散り際に光の尽きた花びらにみな目もくれず家路をいそぐ(小仲翠太

世の中に本というものなかりせば多分私はずっと暗闇(たな

届きたる「いいね」のひとつひとつ取りほぐせば知らぬ誰かの余熱(匂蕃茉莉

かかげ持つ白き紫陽花ここからは火のことばしか話せぬ荒野(夏谷くらら

恋人がいなくて良かった行列のできるパン屋に朝から並べる(ume

不向きだと自分で知っていた「父」は不思議なくらい透明だった(北乃銀猫

いますぐにあいにいきたい ああ、これは「愛に生きたい」かもしれなくて(村崎残滓

「八重桜咲き始めたよ」と言われれば縁側に残る春ふたりじめ(岡田道一

君たちのカルビを焼いているのにさ、勝手に恋をはじめるなよ。(まつさかゆう

イヤホンで君が作った壁憎し金のスプレーでウンコを描こう(紅生姜天ひやむぎっ

透きとおる憎しみもある あの人の割ったグラスを拾う真夜中(ume

明け方に結論が出てファミレスを出ればふたりはひとりとひとり(まる弥

アーモンドトーストを焼く 甘すぎる朝はあなたに似合わないから(Rhythm

指先をさしてしまった薔薇はもうその指先をずっと愛する(銀浪

こんなにも小さい国で張りあってちっちゃいなって見る世界地図(青色紺色

まだ近い距離に居たのに声は出ず頷くままで終わる青春(雨宮雨霧

ひと筋の「きぼう」が過ぎてまた地球何周後かの軌道で会える(萎竹

空を蹴る音楽を蹴る色を蹴る天地無用の二日目の血(はるかぜ

白でさえ二百色ある緑ならもっともっとだ伸びあがれ初夏(青野 朔

どうしても何でもいいと言うのなら目隠しをして指でも指してろ(そば

ながれゆく思い出詰まった雪代よ陽に溶け込みまた逢う日まで(渡愛奈

チョコエッグ いちばん人気がなさそうなキャラばかり出す能力がある(インアン

鉱石になるはずだった成分がわたしの肉体として知る恋(犀川ほの葡

病院の送迎バスの中で聴く無駄に元気なパーソナリティー(谷まのん

透明な光の粒で出来ていたはずだろみかんは、生きるは濁るか?(別木れすり

潮風をまつげで受けてほつほつと覚悟のことを話し始めた(琴里梨央

小さな手みかんを剥けるようになりみかん屋さんは今日で失業(岡田道一

ひそやかなシーラカンスと木蓮は孤独のかたちを何度なぞる(小竹笹

あなたから剝落してく純粋をわたし拾って食べちゃっていい?(犀川ほの葡

あまりにも抱かれたくなるブルーグレー海のほんとは灰色だった(別木れすり

ゆゆゆゆとたまごにふられたふりがながおれのでこにもなぜあるのかな(白雨冬子

いたずらでナイフを刺し合えればいいね 森の中心には何もない(雨野水月

菜の花の底で眠れる人形は雲雀になった夢を見ている(岡田道一

両親と桜並木の屋台見て一目惚れしたおやつを食べた(須藤純貴

ブロッコリー咲かないでいて盲い巣に原始卵胞震えておりぬ(川瀬十萠子

ただいまがある家の子とない私、劣等感の始まりでした。(実森詩音

いつの間にこんな姿になったのか 怪獣の手に小さな手紙(奈路 侃

朝霧のなか事故死せり兄愛し自転車と共に遠く去りゆく(丸山美樹


鼓草輝いて咲き飛んでゆく遠いむかしの記憶のように(丸山美樹


さみしさが煮凝りになるその前に似合うことばで飾るまいにち(丸山美樹

いちごだけ折り紙にして届けたい 春より春が似合うあなたに(Rhythm

シンとしたホームで一人待っていたあの空気にはきっと会えない(

バイビーと軽く手を振り背を向けるバイビー世界キミって世界(琴里梨央

死ぬまではどうせ暇だろ日出る此処から愛でも喰らわせてやる(空虚 シガイ

すっぱだか達が歩いている服を何枚か着ている状態で(仁科篠

気がつけば声変わりした少年のように知らない顔のふるさと(スーパーはるる

気を回し全部裏目に出てしまい床の板目の数を数える (せんぱい

車道へとおりてしまった花びらもきっと誰かに愛されていた(宮緖かよ

ドラえもん、内なるのび太にキスをして硬い体で抱きしめてくれ(鹿ヶ谷街庵(ししがたにがいあん)

名を知れば鮮やかになる散歩道先いく君は花にくわしい(みぎひと

春光の広場をつくる飲み終えたドリンクバーのカップを寄せて(インアン

布団から一番近い砂浜で肺いっぱいに海を吸いこむ(日比野十果

自分のこと嫌いになったらここにきて言われたようなそんな青空(藤瀬こうたろー

投げかけられた言葉の痕がついている 私傷ついてたんだ(

球根を抱くように眠る幼子に毛布をかけてもうすぐ春は(畳川鷺々

ホームから見える本屋の抜け殻に並ぶ去年の赤本のこと(白鳥

ツユクサの葉をふるわせて唇は心は青い震源となる(銀浪

悪口の花咲くファミレスでこころが汚れていても許されている(萎竹

知ることは幸せですか?真夜中に問いかけてくるコーヒーフレッシュ(ume

たまにしかくれなくてもいい愛も水も多肉植物育てるように(古井 朔

強がりと思われたって構わないあなたより普通にラッセンが好き(汐留ライス

透明な距離が二人を邪魔してるこんなに肌を合わせているのに(つくだとしお

おとーたん。はじめて君が言った日の思い出はいまも夏空のまま(つくだとしお

内面に美が宿るって知ってるしブロッコリーの茎は捨てない(鯖虎

死にたいといつか願った肉体で 300gのステーキ頬張る(夏海

爪先にあたる小石が取れなくてじんわり痛むそんな心地で(

使われぬ筋肉のよう久々に君の名前を口に出したら(箭田儀一

貝殻を拾うあなたの背を追って風が攫った麦わら帽子(雨宮雨霧

満ち潮のひとみに浮かぶ月たちをあつめて照らすパウダールーム(まる弥

どうぶつはひとのことばがわかるかな夕焼け空の赤いたいよう(月夜の雨

季節には匂いがあってきみの住む星は四月の夜に似ている(あきの つき

運命ということにしてあきらめた死と詩はおなじ音でできてる(綿鍋和智子

正体に正体があり 正体の正体にさえ正体があり(ムラサメシンコ

春の池水面に映る人影に口開け求める複数の目(渡愛奈

まっすぐに歩きたいのに木漏れ日がふわふわ落ちて路は陽炎(月夜の雨

透明な軟骨そっと抜きだせば烏賊が導く海の窓口(はるかぜ

朱鷺色に空の暮れれば絶え間なき星の摩滅に焼かれる心地(宇祖田都子

また今日もごめんなさいを繰り返すBotのように生きてごめんね(さに。

萩焼の割れにし空のうすあをくこあを攻め来る出勤ブルウ(鯖虎

うどんどこ?器を覆うほどのネギこんなことする君かわいくて(織部ゆい

星の数だけよろこびがあることを祈ればこの眠れない夜も(佐竹紫円

花水木咲く遊歩道を帰って来る ポンポン船の浮く運河沿い(

頑張れる人にとっては難しい頑張らないを頑張っている(ツキミサキ

あなたには有象無象の光でも瞳のハイライトになれたなら(しみず

猫だけが猫舌であるはずがなく、犬も猫舌、鳩も猫舌。(奈路 侃

ほぼ光だった光でいてくれた幸せになるべき人だった(てと

長椅子の端に座って角で手のひらをごりごりする金曜日(仁科篠

許しあいたいのに私たち顔合わせては喧嘩するから、互いの口を塞ぐ (フラ子

肉眼で見えない星にきみの名を付けて誰にも譲らぬ墓標(北野白熊

In church あなたが欲しいと言うまでの長い旅路を思い出してる(納戸青

こいつらにミサイル落ちて滅茶苦茶に全員死ねばいいのにほんと(舞風 奏-かなで-

継いだ金さけてもれだす花あかり皮膚にまとわり服を織る初夏(Takaaki

この♡(いいね)には「いつも見てます」とか「わかる」とか色々こもっていて(

あなたへの短歌が浮かばなくなって思い出に手を離されたと知る(うとか

ファミレスのミニチョコパフェしか癒せない傷があること君に分かるか(紅生姜天ひやむぎっ

海沿いのホームで二両編成を待っていた 青 文庫の詩集(犀川ほの葡

真っ先にゴジラの餌食になりそうなコンビナートも霞むほど春(亜麻布みゆ

噛み付いたクリームパンの断面が当たり前だけどひとりとひとり(まつさかゆう

ひざ小僧あつめて入る浴槽で久々に聞くサッカーのこと(みぎひと

すこしでも荷物を軽くするために置いていくカメラロールの君を(村川愉季

もちろんと夜でも飛んできてくれるきみは頓服みたいなヒーロー(鹿ヶ谷街庵(ししがたにがいあん)

戦争のニュース流している時もアナウンサーのピアスが揺れる(谷まのん

爪先で立ってもまだまだ足りなくて君がしゃがんでやっとくちびる(亜麻布みゆ

うつせみの我が身に宿る月はもう満ちることはない さあ解放だ!(柾木理花

大人には大人こどもにはこどもの勇気があって少年は跳ぶ(萎竹

今ここで降りれば海に行けるってお守りにして今日も降りない(にいたかりんご

洗い物をしてるあなたの袖にみる潮の満ち引き 鉱石が鳴る(畳川鷺々

マカロニでなにかを吸ったことのあるすべての人にあかるい老後(青野 朔

はじめての手紙はノートの切れ端で「まじねむい」から始まった恋(北野白熊

ね、ね、全部聞かせて好きな本 ビール 50メートル走のタイムも!(おもらし

北国もそろそろ桜前線が届く頃です、お元気ですか(もくめ

がんばって生きなさいとは言わなくて今日もおばちゃんオマケをくれる(山口絢子

根菜にかくし包丁入れる母《ひと》我の望めば殺めることさえ(はるかぜ

この沼に化け物なんていませんよここ二百年で一度も見てない(汐留ライス

オーロラに手が届きそう 母子と名のついた手帳を眺める夜は(木ノ宮むじな

石油王!迎えの車はまだですか!声が届いてないだけですか!(もくめ

青空に夜空の星の瞬きを教えるように咲く白桔梗(小仲翠太

爪を持つ鷹も翔べなくなる程の見えない壁は怖いと知って(須藤純貴

あの空、と呼ぶときこころを染めあげる色があなたを守る色です(佐竹紫円

少年よ、大志を抱いてもいいしオキニのぬいをぎゅうしてもいい(サ行

長文のお気持ちメールぶつけられ凶器に見えたゴシックフォント(さに。

御衣黄(ぎょいこう)は花ごと落ちる桜なり落花に埋まる貝塚の跡(椿泰文

パン生地になりたかったなママの手で期待通りに膨らみたくて(にいたかりんご

まつすぐと天国へ向かふやうにしてマックシェイクがストローをのぼる(箭田儀一

倍量は聞いていないと除湿機が満ちる部屋干し同棲初日(稗田 白湯.


点がふと行方不明になってから やや物騒になる消”火”栓(稗田 白湯.


右肩で盛大に船を漕ぐ君へ ごめん、枕はここで降ります(稗田 白湯.

悪い子になっちゃったんだ君からの「やればできる」に照らされたくて(10

デカすぎるインプラントの看板のデカ院長の歯が照らす街(琴里梨央

まっすぐなきみでいてよと言いながら直球投げれば逃げるのなんで(宮緖かよ

連休に合わせたように風邪を引き連休明けにぴったり治る(もくめ

飲み会をいつも断る口実を猫舌にする掴めないあの子(たな

あたらしい夏の私が畳まれてそのときを待つ伊勢丹の手提げ(村川愉季

マスクつけ
ひとり耕す春畑や
周りに誰もなきこの畑(無常観装置

周りより進むスピード遅くとも潜って別の競技にしちゃえ(実森詩音

ガラスペンためらいもなく便箋にアイスブルーのさよならを書く(宇井モナミ

「ご家庭」に全て揃っていないからたぶんわたしは異世界にいる(ひなとと。

怖くなる希望叶った道ならば出会えぬままの二人だったね(織部ゆい

ゴールデンウイークとはなにがゴールデンなのかバターを塗れないトースト(叭居

モノクロな夜をカラーに変えてゆく一人鍋用野菜のパック(りのん

花がすき なんですきかはわからんが同じ原理で君に惹かれる(サ行

セルフハグにも慣れた頃「ただいま」がフローリングに転がり落ちた(辰野音子

昇進はしたくないです天井がガラスの職場じゃパンツ見えるし(木ノ宮むじな

夕立に走り出す子らとりどりのランドセル散って街は深海(小仲翠太

沈黙のすきまにひとひら花びらが舞いこむように気づく初恋(メタのおわり

そっと差す ナイフみたいな指先で振り向くまではわたしのドラマ(白川楼瑠

メロいやら推しやら飛び交う街中でまっすぐ放つ矢のような「好き」(亜麻布みゆ

会ったとき言おうと思っていたのにな、みたいに取れた付箋のゆくえ(真朱

僕らスーパースターになれない、太陽系の中心ですらない(そば

金曜の夜の気怠さひだまりのにおいをふくむねこになりたい(辰野音子

月でさえ横顔を見せてくれるから君は横顔以外も見せて(りんか

はつなつの躑躅あふれてとまらない友だちのいる人のおしゃべり(青野 朔

クレームにクッション言葉を入れながらEnterキーを中指で打つ(水の眠り

軽音の彼のギターを聴くたびに心臓に咲くガーベラがある(鹿ヶ谷街庵(ししがたにがいあん)

モーニング・グローリー・イン・ザ・ファミレス いらっしゃいました おひとりさまです(しみず

数年後 猿、雉、犬は結託し桃太郎氏を訴訟しました(白鳥

夜の露ガラスへだてた指と指さかさま文字がもどかしくて(Takaaki

おはよう 血まみれになったぼくの手が事後承諾の申請を寄越す(まる弥

折りたたみ傘が上手にたためない でもいいじゃない春なんだから(わたこ

胸に抱く正義は人を狂わせる暖炉の火すら外では火災(そば

幻に手を伸ばしてる 幻が一度くらいは振り向くかなって(Rhythm

助走ならいつでも用意されていて、ゼロより前の定規の余白(真朱

おはようの時差に入り組む路地裏に風を満たしてみたき一日(宇祖田都子

あの誤字で待ち合わせよう気づかないふりして直さず取っておくから (銀浪

また猫と子どもがそばに寄ってくるごろんと寝てるだけのあなたに(山口絢子

ぼくはぼくのくらやみにきみはきみのくらやみにまぎれていっそひとつのくらやみ(古井 朔

安全を期待されてる色として明るくなろうとする非常口(雨野水月

膝にあるお皿のことを思うたびすうっと通り過ぎてく河童(せんぱい

落日をジャングルジムに閉じこめて美術館へと変わる公園(りのん

三年で馴染むだろうか胸元ですぐに傾くきれいなリボン(みぎひと

白杖がこつりと打てば眠たげな春の舗道が目覚め始める(宇井モナミ

インビジブルデカナメクジを抱いています 君もそうだと思っています(四辻

ほんとうの音が漏れるのをゆるされてきみに抱かれる楽器でいたい(村崎残滓

ねぇわたし主人公だよいっそもう食パン咥えて走ろうか(マジ)(アゲとチクワ


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