第20回毎月短歌・自由詠部門に投稿いただいた短歌作品の一覧です(表示順はランダムです)
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大人でもごはんを食べながら泣くし理由もないのに鼻血が出るし(汐留ライス)
関西弁使うの時々疲れるよボケとツッコミ強要されて(ましゃこ)
満開の桜見上げるひとはみな祈るしぐさでスマホかかげる(小仲翠太)
卒業と共に逢えなくなる友と最後の春はどこへ行こうか(もろらど)
雪の降る冷たい外で君を待つ手を繋ぐまでかじかむ手先(雨宮雨霧)
カワウソのケンカみたいな話して「スッキリした」って 俺はトイレか(灯志)
百数えもーいいかいって目を開けた もーいいよって世界が逃げた(宇井モナミ)
わがままを言ってもどうして優しいの?ゾンビが出たらすぐ死んじゃうよ?(ume)
数式が解かれる音を聞いているだけの命は間違いらしい(てと)
気温差に翻弄される早春を乗り切る呪文「サンカンシオン」(さに。)
歩き出す道は今日も見えないまま空から降り注ぐひかり満ち(水也)
オーロラは見たことないし知らないしでも寒いから手をつなぎます(松たかコンヌ)
間(ま) 私とあなたが作る距離感で/あの子が来たらその世界は 場(瑞波草)
焦点をずらして夜をまぼろしにしてしまったの してしまったの(畳川鷺々)
南風がかき混ぜられて昨日から微熱のような春の到来(春ひより)
ちっぽけに見えるけどこの石ころは私よりもずっとずっと長生き(フラ子)
孤独って雨に似てる ずぶ濡れの迷子の犬は大きく吠える(アサコル)
冬の半分は儚さで出来ている雪が泥水で汚れる刹那(アサコル)
砕ければチョークぽろぽろ寂しげに晒されている宇宙の底に(まちのあき)
パレードも終わりようやくあだ名から下の名になる三月二十日(サ行)
魂の錨とすべく開く本 繋ぎとめたいかなしみもある(青野 朔)
空に落つ帷に空きし幾億の穴の向かふの人こんにちは(鯖虎)
抱き締めるって目に見えない外套《がいとう》を互いに着せ合うことだった(Umi.)
缶詰が白桃だった風邪の夜スプーン握り満月を仰ぐ(たな)
闇夜でも飛べるようにとフクロウは月のかけらを瞳に入れた(すずきみなみ)
怪獣に明日なります その前に君とさいごの散歩をします(よしなに)
カンバスの縁へと延びてゆく線のふっとゆがんで窓から逃げた(畳川鷺々)
ハリボーを半分ぐらい煮溶かして固めたような修羅場を生きる(汐留ライス)
気の抜けた炭酸水を飲み干して休む理由を考える朝(さに。)
また一首なおまた一首筆止まぬ想いあふるる止まらぬ夜を(ほんみつ)
もう一度会いたくなって水だけで妊んでしまう花園にいる(夏谷くらら)
またいずれ会う日が来るよ言ってたね生きてるうちに話したかった(雨宮雨霧)
街に降る雪が次第に膨らんでここもようやく冬の胎内(梅鶏)
四十を過ぎたらピルは飲めませんたけのこ派とは和解しません(桜井弓月)
新月の夜をねらって惑星の間を飛び跳ねるうさぎたち(雨野水月)
JR忘れ物市 寂しさの値札を見れば100円とある(木ノ宮むじな)
悲しくはないのただねちょっとだけ想い出が胸を搾っただけで(辰野音子)
三度目の昇龍拳を決めた時あなたは何故か顎を触った(ツキミサキ)
断つこともできる包丁でいのちをつなぐ食事の支度をしてる(睡密堂)
刺されてるこれしかないという槍を求める者をつらぬく槍に(非鋭理反)
王冠を集める君はどれほどの王を倒してきたのだろうか(北野白熊)
青のりを怯えず食べるどうせ海に入ってしまう口なのだから(はじめてのたんか)
ゆっくりと回る観覧車の中でだけ話せることが増えていく(箭田儀一)
無色透明のグラスはとりどりの色を映して小宇宙成す(桜井弓月)
しんしんとふりつもりゆく白雪みにまといそまる世界にとけてゆきたい(古井 朔)
三日月の夜空に浮かぶジェット機は三途の川を渡るようにも(ホワイトアスパラ)
ペンギンは帰れなかった人たちを見届け眠るからっぽのまま(せんぱい)
やっと手が空いた深夜に中学生男子のような飯をかきこむ(北野白熊)
(そのときのわたしの想い)渡せずにタイムカプセルになるチョコレイト(真朱)
泣き止んだ空の涙に浮かんでたかっぱえびせんは虹になった(ツキミサキ)
かさ増しのコーンフレークじみた嘘ばかりが生まれ埋もれる本音(空虚 シガイ)
ほんとうだ口のかたちは「ダイキライ」 同《おんな》じなんだ「アイシタイ」でも(北乃銀猫)
巻きすぎて捩じ切れそうな思い出をさらってくれよ 暴風に百合(青野 朔)
猫ならば許されること猫なれどわたしは許してしまうのだろう(きいろい)
「つぎ」があるただそれだけで毎日があなたとだけの「もうすぐ」になる(桜咲)
本当にごめんチョコレートじゃなくて 紛らわしい日に貸したCD(奥 かすみ)
あなたへの出せない手紙は重なっていつしか日記になってしまった(琴里梨央)
バラバラになったわたしを花束のリボンみたいに抱きしめていて(宇祖田都子)
吹き替えの広川太一郎ぐらい大事でないことばかり話した(汐留ライス)
待ち合わせヘッドライトに照らされて雨はひととき宝石になる(折戸みおこ)
後ろ指さされる人になってみて初めて気づく指は見えない(とんだ一杯食わせ者)
寒空に初夏を恋ふれど君の手の冷たきを擦る日名残惜しく(鯖虎)
雨色の絵の具が売れる地球では(百億光年先までおなじ)(まちのあき)
甲府にも善光寺があり善光寺駅北方にあり御胎内巡りす(祥)
燃え尽きた命のように白い月 真冬の朝の青空にいる(木ノ宮むじな)
縦じまの親指の爪読んでみる点字のように歳月のうた(青野 朔)
随分と髪が伸びたわ ※意訳 まだアナタのことを愛しているの(空虚 シガイ)
塗りなさい好きなようにと言った絵の君の海を燃やすバーミリオン(宇井モナミ)
どこまでも羽ばたいていくことりたちいつか羽をやすめる安寧(水也)
口角を吊っていた糸を切りましたマリオネットは笑顔を捨てて(宇井モナミ)
うちつけに花のひとひら眼にさやり人なき道に音もこそせね(不動いわお)
ハルジオン 寒の戻りにあなたから原始反射のようなため息(塩本抄)
きみの言うことがいちいちツボだから相性が合うことにしました(真朱)
篝火に憂いをくべて明日を待つ雪の静けさ確かめるため(非鋭理反)
僅《はつ》かなる喜びありて息吐けば夜気震はする声となりにき(不動いわお)
なんとなく遭難事故の解説をみている Aの死に目をふせて(栗原馴)
iPhoneに雪のマークがちらついて春一番のため息をつく(あだむ)
とりあえず死ねなくなって生きている くらげの幽霊が飛んでいる(雨野水月)
泣いたのは君のためではないんだよ全部自分のためだったんだ(雨宮雨霧)
トラウマに向き合う強さは私にはいらない ぬるま湯で茹でてほしい(Rhythm)
きみの声きみのしぐさに細胞のすべてがきゅんと踊って微熱(真朱)
昼日中サガンを読めばアンニュイの意味あやふやにアンニュイになる(桜井弓月)
捨てられる予定のカレンダーのうら白く広がる無限が好きだ(奥 かすみ)
粉雪、ぼたん雪、なごり雪、全て女性を形容している(白川楼瑠)
君の手を取りたかったよ本当は飛び立つ鳥の背に吐き捨てる(水也)
指はどことどこを押さえて吹けばいい?子供に教わり記憶を辿る(ましゃこ)
玄関に芍薬を生けて認知症なれどあなたはあなたでしたね(小野小乃々)
言えぬまま雪の白さを猶予とし蕾ふくらむまだ春めくな(サ行)
天秤の生まれ変わりが観覧車ひとつ傾げばひとつ正しい(夏谷くらら)
舟浮かぶ池に泳いで緋の金魚 尾鰭泳がせ藻の蔭に入る(祥)
「何もない」がどこにでもある故郷に本物の夜空を置いてきた(10)
神様の嘘を信じて死ねるなら春の光を引き換えにして(白鳥)
見てますかボイジャーわたし1ドットみまんでいきていきていきてる(灯志)
マリオネットはもう笑わない星たちの行き着く果てにひとり座って(佐竹紫円)
来世ならまあ君んちの猫になりたいさみしいよるは(朝路千景)
すみれ入りの方をあげる、春でしょう、ハニートースト久しぶりでしょう(塩本抄)
黙々とじゃがいもの芽は取るけれど子育てなんて慣れてはいない(奥 かすみ)
スーパーの少し高めのチョコレート野菜室にてひっそりと飼う(琴里梨央)
雪が降る コートの白に染まりゆく世界は廻る私を残して(古井 朔)
食べる時泣くだろうからその分の塩味を抑えにぎるおむすび(空虚 シガイ)
手のなかでマーブルチョコが孵化しそう羽ばたかないでまだここにいて(きいろい)
予報では金平糖が降るらしく口に入ればラッキーデーです(宮緖かよ)
おつかれもごくろうさまもない一人暮らしの夜にTSUTAYAの期限(村川愉季)
中国語わからぬままに聴いている 皇帝、皇后、皇太子妃の会話(祥)
処女性と童貞性を足して割るみたいに覗くドーナツの穴(よしなに)
見上げれば粉雪そっと立ち止まる冬の自転車真白に染まれ(アサコル)
Xの大海原に放流す忘れるために詠む歌がある(山野たみ)
数ヵ月振りにヤッホと太陽にあいさつしたよ空はオレンジ(北乃銀猫)
雑踏の君とようやく目が合って電話の君に「切るね」と告げる(村川愉季)
三人で暮らしてみてもいいと思う原題どおり訳してほしい(きいろい)
愛情は与えたいって思わずに受け取りたいって思わせないと(北乃銀猫)
料理中ペーパータオルに火がついて仕掛けもないのに手品師になる(ぐりこ)
風だけで今が冬だと言い当てたひいじいちゃんの柔らかい爪(村川愉季)
帰宅部は家に帰れば美術部で夜は天文部も兼ねていた(睡密堂)
観覧車 掴まり立ちの「ごめんね」が伝わらないまま一周してる(わかば)
コンビニへ行くときにだけに公園を横切るボクは風と呼ばれる(宇祖田都子)
カラカラと転がり落ちる空き缶の音が止んだら好きだと言おう(あだむ)
ひまわりが夏を選んで咲いたってテレビの中の人だけ笑う(てと)
匂い付きペンで書いた書きかけの恋文 香りはもう失われて(半)
踏み入れて蹴散らしながら駆け抜けるきみは広義の意味の春嵐(あきの つき)
生きてって叫ぶあなたのその声はなんてきれいな暴力でしょう(てと)
「死にたい」が口癖だった友達と鮮やかすぎる夕焼けを見た(白鳥)
眠たさはまぶたの重み 剥ぎとれば宿してしまう常《とわ》の青天(よしなに)
わけあえば、だれも欲しがらなくてすむ なら 星形のピノはさみしい?(松たかコンヌ)
時を超え過去からやって来たピラフそういうもので救われる夜(しみず)
辛いより辛いのほうがマシかもね痛覚を抱く箇所が違うだけ(しみず)
あの愛は嘘ではないと言いたくて造花を飾るように暮らして(あだむ)
ずぶ濡れのバス停はいま無人島救助の船は全然来ない(折戸みおこ)
「おかえリス」「ただいマウス」と靴ぬいで人間ぬいで前足でハグ(サ行)
天国の裏庭に池があるかぎりグラスハープは輪唱をする(夏谷くらら)
わたしもうナスもワサビも食べれるし一緒に”好き”を楽しめる 呑もう(灯志)
「大丈夫、太宰治もそうだって」 つまり人間失格ですか?(ume)
猫の背に受験番号を貼り付けるついでにバタートーストも貼る(北野白熊)
異常音ではなくこれはきみにだけ反応している心臓の音(宮緖かよ)
公園の猫に愚痴などこぼしたら仕事中だと叱られる午後(さに。)
風ください、エスカレーター下りつつ羽のかたちがまだわからない(まちのあき)
そら見あげそらした喉のなめらかさ 噛みつきたひのをぢつとこらへる(さんそ)
間違ったバスに揺られて遠ざかる生活あるいは正しい私(琴里梨央)
それだったらなんにもしなきゃよかったなー って ジェンガみたいに笑うの、やめて?(松たかコンヌ)
何度も何度も死にたい人間を陸へ押し戻そうとする潮風(雨野水月)
風花のかけらは流転のなか空に今日で何枚目のカーディガン(塩本抄)
願わずにいられないんだ星だけはきみの街より綺麗に見えて(宮緖かよ)
とほほ、って言ったあなたの口を見てもう一度見てアイリスアウト(畳川鷺々)
この雪はいつ死にますか? もう死んで赦されたから雪なのですか?(宇祖田都子)
去り際に「雨の匂いがする」とキミそれから雨の匂いはキミの(ツキミサキ)
雪解けに 新たな兆し 眩しくて ただただ前に 進む船(田中ダニエル)
分けられるものが体温しかなくて尾崎豊を小声で歌う(睡密堂)
カフェオレが冷める早さに似ていたね流した涙が乾くまでに(箭田儀一)
地下鉄の生ぬるい風受け流し友に会う日を数えている(棚果)
あまつぶをよける自信があるらしく傘をささない小四男子(月夜の雨)
幸《さきは》ひの一日《ひとひ》を久に過ぐしをり安けき今の終はらずもがな(不動いわお)
日当たりの悪いところに生えてきて実がならなくてもトマトなんです(小野小乃々)
もう味がしなくなっても噛んでいるガムは僕らに少し似ている(折戸みおこ)
あの日ぼく自分と勝負してたんだ 傷つけちゃってごめんよ、うさぎ(小野小乃々)
生きようとあなたの肺が絞り出すほそくて白い息は繊月(月夜の雨)
ブランコが揺れているのはさっきまであなたがここにいたせいにする(わかば)
観覧車、スワンボートは2人乗れる 記憶のきみと乗るのは嫌い(わかば)
風強く落ちたメジロを掬う手のかたちと固く閉じた瞼と(せんぱい)
朝焼けを背負う白鳥 美しく生きる覚悟を決めた微笑み(すずきみなみ)
流産と流れ星とが交叉するララが通った産婦人科で(はじめてのたんか)
冬ねむる蛙飛び起きスケートをせんと足先ちょっととがらす(はじめてのたんか)
作家とは己が身を食み珠を産み食い尽きしあと夢と消えたり(つくだとしお)
タンブラーに白湯を入れて持ち歩くひとりで生きる準備みたいに (箭田儀一)
夕焼けと夜の間に置いてきた大切にされなかった今日を(白鳥)
冬空にすっとひとすじ流れ星ひかって消えるために生まれた(月夜の雨)
列挙した将来の夢塗りつぶす深夜の家系身体充たして(非鋭理反)
宇宙ごと小さな夜に閉じ込める アイゼクライネ・プラネタリウム(木ノ宮むじな)