第21回毎月短歌・自由詠部門 作品一覧

第21回毎月短歌・自由詠部門に投稿いただいた短歌作品の一覧です(表示順はランダムです)

[選評結果一覧など「毎月短歌コミュニティ」でいちはやくまとめられています。参加はこちらから]


立ちなさい四月の森の手のひらを牝鹿の脚は硝子ではない(夏谷くらら

宝箱の箱《バコ》は元気な無重力いっぱい詰めよう飛ばないように(瑞波草

葉は朽ちて雨にうたれし紫陽花の強剪定にたまりゆく命(古井 朔

雄孔雀は羽を広げて雌孔雀へ冥王星の位置も伝える(宇祖田都子

無意識のウィスパーボイスを拾われて肩を抱かれる三月の午後(水の眠り

「悲しい」を否定しきれず母音だけ踏みつけできた君の「優しい」(空虚 シガイ

新しい風よ吹けこの閉塞した世界に吹き荒れ薙ぎ倒してゆけ(よいしょ上手の高木さん

だとしても鏡に映る双丘はこれはわたしのための乳房(Kirio

かぶりつく瞬間ぴょんと現れるクリームしっぽのシューの妖精(永沼 花楓

増えすぎて合わせ鏡に存在を奪われた僕へ手紙を書くよ(ほしのひかり

硬いほどいいのは拳、金剛石、シンカンセンスゴイカタイアイス(睡密堂

一生涯母は気付かぬ母親になる意志持てぬわたしの理由(北乃銀猫

海なき地下に水平線 ありがとね駅のタイルを青にした人(てん

さくらみみ荒野をあるいて君は来て今はふとんでほころびている(田中雉鳩

きみにだけ神対応をしてること 早く気づいて、そして告って!(真朱

アミロイドβの花が大脳を埋めて貴方は少女に還る(村川愉季

春色のコスメとコートを装備してドアを開ければ戦闘モード(桜井弓月

自販機の下を覗いたその奥の闇に落とした〈普通〉探して(たな

ニッキ水 くちびる赤く染めているひとはあなたの面影を持つ(六日野あやめ

チアの振るポンポンみたい 踏み出した春を応援する沈丁花(真朱

この身体(からだ)たとえ垢滓(こうし)にまみれても心の奥は純潔のまま(泡姫なずな

あなたとは明朝体でケンカしてゴシック体でセックスをした(よしなに

蝶を追う吾子の背中で休む蝶 私の背には幸せがある(北野白熊

いくつもの思い出の背景として静かに立ち続けている校舎(睡密堂

神様の気まぐれがあってここにいる空き缶ひとつ蹴飛ばしながら(春永睦月

渾身のドラミングをする静かなる一番乗りの会議室にて(琴里梨央

海と夢どこか似ている 寄せ返す波は消えずに妖しくうねる(アサコル

死ぬことは最後の手段に取っといて、一旦わたしとデートしないか?(水柿菜か

夜の底羊の蹄たどり行く電気毛布のぬくもり供に(北川

春だから春だとしても春なのに春さえも春だって さみしい(Umi.

透明な水に落ちたる絵の具見てこんな風には混ざれぬふたり(箭田儀一

野良猫と遊ぼうとして引っ掻かれ孤独どくどく血が流れてく(小久保柚香

右胸の硬き腫瘍を守るがにいだきぬくめるひだりてのひら(ピロ

めがしらに象さんの皺 老いただけやさしくなれるかと思ってた(青野 朔

心臓と心はきっと別々でふたつのいのち抱えるぼくら(月夜の雨

寒空の傘に滴る銀箔はどっちつかずのあたしのようで(

無視しても構いませんよ家にクマが来ない地域の人の意見は(汐留ライス

お守りにはじめましてを携えて君がいない四月へ漕ぎ出す(まつさかゆう

流行歌 爪と指とのあいだには今日の冷たい証が灯る(畳川鷺々

通販でしあわせを買う届かないラピスラズリのしずかな呪い(小野小乃々

寂しさは無限に埋められない穴で、ただずっとそこに空いている穴(百壁ネロ

誰ひとり正しくはない だとしても両生類の肌が眩しい(きいろい

あなたしか色を持たない夏でした潮にまみれたヘアゴムの青(短歌パンダ

横たわるときにはじめてあらわれる鼓動のように穏やかな水(葉和遊

水面を見上げてみれば花筏かさなる色の影は濃くなる(月夜の雨

おやすみは消えることとは違うよと赤子を揺らしながら教える(琴里梨央

印象派展示は逆走できなくて光をひろうしかない午後は(はるかぜ

文具屋が三度目の転生を終え更地は春の野花で満ちて(あきの つき

いやがらせ油断した時見逃さず静電気さんもう春ですよ(イノセントスキー

蛍光ペンいつも持ち歩き「死」の文字を見つけてはそっと線を引く遊び(ホワイトアスパラ

丸まって卒業証書は筒に入《い》る思い出さない母校の日々と(宇井モナミ

ファミマ出てファミマが見えてファミマ行きファミマを出たらまたファミマある(百壁ネロ

早朝のつめたい皿を光らせて並べるりんご吾子を守らん(青野 朔

気がつくと伸び切っていた子の髪に余裕の無さを知る年度末(さに。

吹く風に預けておゆき花びらも積もりすぎれば枷になるから(宮緖かよ

幸福について悩んだことがないクラスメイトの幸福な髪(木ノ宮むじな

小春日の日陰に残る雪を見て思い出す人がいるということ(Umi.

ラーメン屋跡地にできたラーメン屋 私の死後に生まれる誰か(北野白熊

窓辺には安くなってたシクラメン たくさんほしい明日をまつ訳(みぎひと

信じるということ、要は2~3人前のレシピは2で構わない(ぶりきのかに

「らんまんって感じがするねらんまんって」 そんなきみこそ春なんかより(木ノ宮むじな

シャツ越しの背骨に沿ってつうううと開いてみてもやさしいあなた(サ行

あんなこと言わなかったらよかったとお風呂の中であぶくぶくぶく(折戸みおこ

蛇苺ぽろりぼろぼろ泣きながら人ってほんとに死ぬんだねって(はるかぜ

一センチ浮いてる わたし春だからチョコも飴も終わったのだけど(水也

水のない水槽越しに目が合えば僕らも生態展示の一部(村崎残滓

ひとは皆、散り際が好きもしそれが誰かの命であるとしても(泡姫なずな

八日目があればなにかが変わったの一週間で別れた君と(水也

淡々と階段のぼるタンタンと 花 花 花がこぼれる(サ行

「ねむってる」と、あなたが言えばねむってるふりをしようか銀河のように(

春なのに、春だけど、春だからこそ、風に阻まれ歩き出せない(宮緖かよ

鏡越し赤いドレスを抱きしめてこんな肩にも羽はあるから(六日野あやめ

好きなのに依存の海へ沈めちゃうわたしは陸の人魚なのかな(永沼 花楓

エコバッグ 中のいちごの置き場所がちょっと悪くて これ傷害罪?(水柿菜か

あの頃は確かにそこにあったもの 平らな石で春波を切る(藤瀬こうたろー

番号を続けて押した時に出る音をあなたと記憶する脳(ツキミサキ

瓦礫にも心があって公団の解体現場の悲鳴がとどく(水の眠り

ほどほどに言葉をかわす老夫婦サクマのいちごみるくの香り(くじら

満月の夜が零した花びらが四月の雪のように降ります(

空何処とけゆくからだ捩らせて腸へとくだる胃の中の蛙(非鋭理反

ただ浮かぶだけの風船に希望と名付けた日から呪われた空(野分響

物じゃないものにお金を使えないゲームセンターと恋が苦手だ(木ノ宮むじな

アフォガードみたいな二人溶け合って愛という名の海に溺れる(空虚 シガイ

モノクロの記念写真に写る吾にどんな言葉を今かけられる?(よいしょ上手の高木さん

トイレより「妬み」「嫉み」に「勇ましさ」オールジェンダー改修工事(瑞波草

元気かなレジで笑顔をくれる子を祖国で待っている母や父(のがの

しあわせのかたちもだから色々でホケミに絹ごし豆腐をまぜる(ムラサメシンコ

張る弓をかたどる月の隠れをり矢の兆しあり花愛で足りず(鯖虎

抱くほどの膝をもたないぬいぐるみたちよ来世も笑顔のままの(畳川鷺々

ベランダでたばこを吹かす君の背は強がることが大人だと云う(雨宮雨霧

罫線に蔓を這わせてあなたごと葡萄の園をかくまっている(夏谷くらら

わたしにも威嚇をしない夜があり 針が一本もない針刺し(葉和遊

「追いだきをします」くらいのテンションで愛してるって言えたのに 夢(白鳥

老夫婦歩んだ日々のそのままにカフェで分け合うシフォンケーキよ(桜井弓月

「どうぞ」って心のおすそわけどうも。よければぼくの心もどうぞ(てと

かなしみを纏いてあまた紫陽花の茂みは雨にひかる星雲(小野小乃々

雨粒が落ちて滲んで乾いて、陽。そうしてみんな忘れてゆく、死。(エビ山

アスファルト滾る蜃気楼(ミラージュ)いつまでも消えない傷が切れない絆(ピロ

不安定ゆらゆら動くこころあり 子が降りた後のブランコの寂し(水柿菜か

東京は空気が薄い誰ひとり二番星すら気づかないまま(白鳥

人づてに聞いたよ人魚になったと君は死ぬより消えたいんだね(たな

「押しあける」パッケージに書いてあった壁を乗り越える術のように(空虚 シガイ

はじまりの神らと同じよう僕らは子らの育て方を知らない(たな

「こうかい」や 海を目にして後ずさるか前に進むか 君はどっちだ(

産まない、と産めない人に言えぬ午後 それぞれぶんのドーナツに穴(つし

CVと 立ち絵と差分 水炭素 きみに触れるに 何が足りない(わんダフル北旅人

クラス替え期待と不安入り混じり桜の色を一滴足した(雨宮雨霧

太陽のように元気な子どもにと贈る名前と祝福の晴れ(海沢ひかり

境内で枯葉を拾い地図として君が今住む町を訪ねる(宇祖田都子

桜咲きすっかり春だと思いきや凍える寒さや四月馬鹿の日(よいしょ上手の高木さん

切り花の斜交いに待つ発根がみぞおちの底錨を降ろす(エビ山

近況を話すあなたの目を見れずスプーンで割るブリュレの部分(白鳥

生まれると同時におぎゃあと泣くきみはこの世が苦界と知っているから(花林なずな

五線譜を舞う音符が枯葉のようで 少しさびしい曲かもしれない(Umi.

鍵穴に鍵がうまく刺さらないように言葉を選ぶあなたで(箭田儀一

ポッピングシャワーが僕の分までもハジけてくれる真夏の路上(村川愉季

のびやかにメタモルフォーゼしてみせる昨日より今日今朝よりいま(まつさかゆう

希死念慮のことはさておきわたくしはギトギトのチャーハンも好きだよ(汐留ライス

割り切れぬ数字のように暮らしたい雨があがったばかりの道で(箭田儀一

春うららセノハチ越えで思案するわが人生のダイヤ改正(とんだ一杯食わせ者

散りしもの淀む水面に磔《はりつけ》に王は王によって葬られる(古井 朔

金曜はグラスに注ぐ金色(こんじき)が讃えるわたし生き抜いたのだ(みぎひと

高いファーストクラスのやや下を飛ぶ私たちのエコノミークラス(yohei)

きみが好きな本を読めばへんてこな時間に起きても独りではない(村崎残滓

片足を捥がれたように飛ぶ蝶はぼくの指には止まることなく(かなしだ

生きること死にゆくことの悲しみを予感しているような産声(桜井弓月

これが裸婦?あぁもう私なんにでもなれる気がするありがとピカソ(琴里梨央

なんてね、を繰り返すうち真実は姿を変える砂の絵のよう(ツキミサキ

その手から伝わってくるぬくもりがわたしに春をおしえてくれる(佐竹紫円

コーヒーをしきりに啜る僕たちの自己受容への健気な努力(村川愉季

なんかすごい機械ですごい人たちがすごい何かをしているスタバ(てと

ミルクあげ抱くと笑った弟が飛び立つ羽をそろえるニトリ(すずきみなみ

裏側でいろはす補充する指が触れない位置のいろはすを買う(きいろい

おやすみと言ってほしいの君だけに明日の暗さに泣かないように(アサコル

春雷をものさしにしてきみまでを飛んでいくから 待っていてくれ(

デジタルの時計、車のナンバー、あなたの生まれた日ばかり目で追う(真朱

口中で砕くフリスクいくらでも増えるタスクに首をかしげる(みぎひと

酒のある自販機の蛾の両の目の人を留める酒池の淵にて(鯖虎

肺呼吸できないような息をする、ヒトになりたい人魚のように(北乃銀猫

海岸線を外してネックレスにしてかぐやのようなあなたに贈る(

二百ある白の見分けはつかないしたった一つの明日も見えない(百壁ネロ

靴下を裏返すように生きてみたい 存在を心そのものとして(村崎残滓

ゆらめきにゆらりガラスはゆれはじめぼくらは泡の言語ではなす(月夜の雨

がらがらの駅のホームを駆ける風わたしに席を譲った人だ(てん

親指のサイズになったら愛せそう なみなみ満ちたミルクピッチャー(しみず

わたしだけ聞こえた糸の切れる音おちていくまであとどのくらい?(宮緖かよ

ぐんぐんと伸びる新芽の勢いに我が子の成長重ね微笑む(はざくらめい

その解を求めるまでの数式が異なり過ぎて選ぶサヨナラ(さに。

ジリジリと目覚まし如く蝉鳴けば通りすがりにそろり息止め(中山 みみ)

レコードの針を落として静けさをなぞるあなたの国のことばで(六日野あやめ

クイズです。あなたに見せるためだけに履くスカートがある。◯か×か(さに。

カニかまはやさしい嘘をつくけれど決め手に欠けることばかり言う(きいろい

ミミズだとゴカイしているゴカイらをゴカイのフリして見ているミミズ(エビ山

やかましいルールはおれが決めてやる先手王様レーザービーム(汐留ライス

きみどりを生み出してみて、ねぇフラメル 息吹き目覚めるハルケミスト(別木れすり

ケロイドの傷の稜線ふれるたびわたしの過去は遠い山なみ(はるかぜ

金で継ぐために生まれてきたような傷だと思う(そうなのでしょう)(しみず

傷口をぬるい湯でさえ責め立ててああしていれば勝ててた試合(宇井モナミ

からっぽになった部屋には捨てられぬ思い出がまだ残されている(雨宮雨霧

記憶のなかで光るのは忘れじの甘く染み込むうたかたの夢(水也

スカイツリー右手で持って夜削り星のマークを三つ揃える(宇井モナミ

開演のブザーもなしに四月来て思いもよらぬ高さまで春(青野 朔

我々は死に出会うため生きているよき死に花を手向けるために(実森詩音

みにくさをただ抱きしめる夜のある自由のために破る女性誌(Kirio

いつも通りレシピ通りに怪獣の卵でとじた海さようなら(ほしのひかり

出る問題ヒントくれてた先生が「人生だけは分からん」と言う(藤瀬こうたろー

流星に祈りの言葉は長すぎてエレクトリックな波でとどける(水の眠り

苦しみを味わいやがれとめばちこが目薬の苦さを教える(小竹笹

道端で今日が溺れていたのです両手ですくう僕だけ止まる(ツキミサキ

そのひとが鎖骨を水で満たすとき溢れるための水を知るとき(Kirio

おもいきりもぎ取ればいい根元から羽ばたくことない羽はいらない(北乃銀猫

同じだけ夜をかぞえていたいのに鼓動の数があなたと違う(よしなに

さよならもはじめましてもないけれど四月に下ろすパンプスがある(わたこ

いつだって家族を笑顔にしてくれた真面目な父の定番のギャグ(花林なずな

今宵また身をふるわせて香を放ち真闇にさくらひとひら開く(春永睦月

押し入れで眠る勇者の剣《つるぎ》がぴかっと光ったような乾杯(まつさかゆう

騙された気持ちをどこに置きましょう冬の空とか夢の森とか(畳川鷺々

汚されて汚れて生きてふりかえる 夕暮れに飛ぶ蝙蝠と空(

ゆく水は帰ることなく川をゆく 病葉なども暗渠に消える(

星が巣に帰る夜にはたいせつなひとをひとつと数えたかった(短歌パンダ

春だから 他に理由は見つからず鼻からイチゴジャムが出てくる(北野白熊

ありがとうあなたがいいねくれるからわたしは今日も頑張れるのです(yohei)

一冊のパウル・クレーが燃えるのを雷越しに見ている 猫と(宇祖田都子

何者にもなれない僕に三月の空は光をくれて戸惑う(藤瀬こうたろー

小さき手小さき口のハーモニカ奏者はCメイジャーだけを吹く(葉和遊

帰宅部は家に帰れば美術部で夜は天文部も兼ねていた(睡密堂

雨の日に傘が勝手に歩いてる集合場所は水たまりかな(海沢ひかり

封切りの前の予告としてふたり週末にだけ作る夕食(鯖虎

一人乗る特急オホーツクの揺れスイッチバックで会釈の二つ(ほしのひかり

掛け布団から芽を出してもう一度土に戻った二度寝の時間(折戸みおこ

数多ある理不尽は土に埋められてロマンチックが謳われる庭(別木れすり

雨上がり世界が上下になった時私はどちらにいるのだろうか(瑞波草

傷口は見せてあげないだあれにも 白鍵 黒鍵 白鍵 黒鍵(サ行

橋に名を付けあいながらふたりとも橋の向こうの景色を見ない(夏谷くらら

毀《こぼ》れても壊されないものとして刃《やいば》は深くこころ突き刺す(古井 朔

新緑を付箋のようにめくりゆくあなたの綴じた春のページを(小野小乃々

人間に生まれたときに抜け落ちた羽舞い踊る今日の星空(春永睦月

野良猫を助けられない孤独さを抱き締めてまだ悲しい夕暮れ(アサコル

遅刻理由:夕方みたいな朝のため行くか帰るか分からなくなり(別木れすり

眠たさはまぶたの重み 剥ぎとれば宿してしまう常《とわ》の青天(よしなに

デニッシュもフランスパンも焼き上げるキッチンが世界地図に変身(永沼 花楓

説教がはじまったから仕方なくマリオになってスターをとった(てと

星屑は音を立てずにひかるから君の零した言葉もひかる(短歌パンダ

夜を徹し語り明かした友達が夜明けとともに親友になる(花林なずな


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