第18回毎月短歌・テーマ「雪の短歌」部門に投稿いただいた短歌作品の一覧です
ゆひらって言ってみたいなあなたへとアイスのスプーンくわえ とけゆく(りんか)
冬の朝 寝ぼけまなこの 君が来て「ゆきだ!」とはしゃぐ『すきだ』と思う(岩澤ひら)
大量の大根おろしの雪が降る鍋から顔を出してるシロクマ(ツキミサキ)
入口の煙突一つのみ残し雪は埋めたり山の全てを(椿泰文)
ひとりよりふたりの方がさびしくてスノードームに雪は降らない(よしなに)
俯いた僕の一歩を受け止めてぎゅっとハグする夜の雪道(奥 かすみ)
白い朝 雪が隠した古傷を起こさないようゆっくり歩く(佐竹紫円)
編み物が趣味のAの自信作 初雪繋ぐロングニットジレ(別木れすり)
冬雲は空人のミルに詰められて降るよ今年の仕上げの雪が(畳川鷺々)
結晶の形がいろいろあるように 人間だって違って当たり前(水柿菜か)
まっすぐに来たの吹雪にはたかれて冷えた身体でただまっすぐに(村崎残滓)
雪の日は憂鬱だったわたくしと愉快なきみで辿るオリオン(早春)
新雪に足跡つけて開拓者めく心には金管が鳴る(睡密堂)
雪の香(か)が鼻の奥へとツンとつくあぁ積もるのだと空を見上げる(瀧)
帰り路を失くす速度で降り積もれ 君と置き去り、世界で二人(星乃澱)
冬 Cの形になって眠るとき猫のサイズで積もる粉雪(インアン)
ネクタイであなたを縛れないことを知らぬふりする 雪は綺麗ね(朝路千景)
有害であれ!初雪をふみにじり静謐をむさぼる怪獣になれ(三月)
だとしても救われていい存在で頬に触れれば溶ける淡雪(あきの つき)
夜に降る雪に思いし通勤とビタミンを感じない野菜室(鯖虎)
「ねぇ起きて雪だよ雪」 うれしそう生まれ育ちもこの街なのに(北乃銀猫)
積もらない雪でよかった 聞くたびに祖母はわたしの名前を褒めて(夏谷くらら)
晴天にアイゼンの音アルプスの風の湧きたつ白馬雪渓(椿泰文)
おしよせる春にさよなら拐われてぼくの心に溶け残る雪(月夜の雨)
少しだけ笑った顔が怖い人 雪の深いところにいた人(ume)
手のひらで受けた初雪手に染みて大地を知らずに私となった(琴里梨央)
雪の夜だけ私たち異星人 言葉ばかりの惑星(ほし)にサヨナラ(Kirio)
雪を踏む音と感触味わいてただ一心に雪を踏みゆく(明眼子)
雪原にふたり並ぼう大の字で凍死死体は綺麗らしいよ(桜井弓月)
宇宙へのエレベーターがなくたって雪が降るのをただ見上げれば(帯)
伸ばす手は透明な壁にはばまれたドームの中の雪降る街で(宇井モナミ)
生と死は繋がっている しんしんと積もった雪は骨の色して(アサコル)
やってない、と強めの語気で言う吾子よ雪やこんこと灯油車が来る(まちのあき)
俯いたままでいいよね雪道は淡く明るく照らす足元(混沌バグ)
結晶がかたちのままに袖にのる山の空気の水分が僕(土屋サヤカ)
見て見ぬふりしていたことが雪のよう音もなくただ積もっていくよ(箭田儀一)
「食べてみた」とかいう君の舌を見て雪にも色があると気付いた(雨野水月)
はらはらと舞う初雪を手袋に守られた手でそっと受けとる(青色紺色)
宇と宙を白いかけらで描きだすはてなき空の定規みたいな(吉井ヨッシー)
雪を見に北の国へと旅に出る準備してたら風邪ひいた冬(佐倉)
輪郭を縁取るように降り積もる雪よこころの形を見せて(中村 杏)
雪解け水を飲んで育ってきたのでしょう ルーズリーフのやさしい香り(宇佐田灰加)
風に乗る雪が頬に当たるからしおらしく溶けて伝って落ちた(冷茶猫)
雪よりもマシュマロよりも真っ白で文字にできない感情がある(西見伶)
授業中「雪だ」と叫んだ友達が見ていた黒板ではない世界(汐留ライス)
あの時にあっちを歩かなかったから顕微鏡で見られる六花(綿鍋和智子)
雪のした深く眠ろう神様に見つけられないわたしですから(六日野あやめ)
ぼくたちが実は動物であるように誰かの雪になるということ(たこ!)
君の頭やまつ毛に積もる雪になりたい君の上で死にたい(中野ウミネコ)
朝一番少し積もった雪丸めできた命の長さ、2時間(灯志)
飛騨の冬、色を消すのね雪景色だから春にはお祭りがある(山野たみ)
積もったら好きだと君に伝えるね あと三メートル、九州中部で(別木れすり)
もし雪の結晶に今なったなら私は綺麗な形ですか?(ツキミサキ)
雪国のひとだったからくちびるにうたがなかった うたがなかった(Kirio)
現実で初めて見たよスキー場で転んで雪だるまになる人(汐留ライス)
新雪にあしあとつける一人目の月面着陸めいた鼓動が(水の眠り)
積雪の断面をみて蝋燭の生を紐解く必要がある(土屋サヤカ)
落雪で窓が埋まるとできあがるミステリでいうところの密室(北乃銀猫)
銀色の猛禽類のようでしたお母さん雪の日のあなたは(川瀬十萠子)
キズありとだけ書かれた家具たちはリユースショップで雪を見ている(はじめてのたんか)
雪かきの手伝いをする子の握るプラスチックの真っ赤なスプーン(インアン)
(汚された初雪さえも美しく手の届かない)冬は嫌いだ(あきの つき)
ジャズバーの階段を出るかたわれの手套に落ちる雪のひとひら(六日野あやめ)
イヤホンをしまって帰る足元の雪のしきしきと死にゆく音の(菜々瀬ふく)
春の雪待ちわびている奇跡とか夢みたいって言った誰かが(水也)
しわくちゃなダウンを滑る粉雪を払って気合入れし元旦(あだむ)
雪かぶる君のふるさとの写真に住んでみたいななんて嘘つく(鯖虎)
本心は雪の深くに埋めておく春になったら起きてくるはず(ume)
二十年最後の空に雪来たる初めて見た空と同じく(常築日々輝)
痕跡は雪が覆ってくれるだろう時計仕掛けの帷が白む(木ノ宮むじな)
リネン地に聖なる雪が降るようにひと目ひと目を縫い込む ひとり(早春)
手に触れて溶けてしまう雪はまるで 消えていった思い出のようで(水柿菜か)
ジャリジャリと透明の雪踏みつけるゆきだるまとか作りたかった(佐倉)
降る雪に重なる父の足跡よ白き冠老いを纏いて(葉澄葉)
雨混じり積もらない雪、銀世界へ憧れた南国少女(はざくらめい)
交わらぬふたりの糸は雪解けの泥がつくのを待ちわびている(海沢ひかり)
ばら色もひかりの色もそら色も含んだ雪をひらくカンヴァス(夕波ちづ)
屋根の雪落として落としてまた明日 心拭いても拭いても(雨)
テレビには野球チームが練習し室外機の風が雪を曲げている(新井宗彦)
雪が肩に落ちたときは溶けるまであなたに触れていていいですか(りゅーせい)
ひとひらがふたはらみはらと落ちてゆき何ひらめから雪になるのか(月乃さくは)
雪は水だとか言葉は音だとか細胞は私ではないこと(たな)
東京で見る雪だるまどことなく生まれたことを憂いているの(桐谷やまと)
指先に残るあなたの温もりは雪解け水のようにやわらか(ホワイトアスパラ)
残雪を語ってくれた教科書はいまもかぷかぷわらっているの?(Rhythm)
生まれつき甥は写真家本能で障子に穴を空けて見る雪(谷 たにし)
もう会わない時間は雪の匂いして雪に埋もれたきみがかわいい(川瀬 翠)
降りたての雪の明るさだったろう羽を失くしたばかりのこども(まちのあき)
雪原にあなたが立ってくれるなら心の中に灯る故郷(混沌バグ)
まっしろなうさぎが線路を駆けて行きわたしもいつかは雪へと戻る(宇佐田灰加)
氷点下 朝の空気を吸い込んでスノードームになっている肺(美鷹周)
雪なんてどこで見たっておんなじで、おんなじだからあなたと見たい(宮緖かよ)
音さえも飲みこみ白く染め上げてあの日のすべて埋め尽くして(瀧)
はらはらと舞うならそれは美しくけれどそんなに求めていない(静麗)
大阪に雪は滅多に降らないが心の中は吹雪のごとし(いちかわ ゆうた)
ごめんねはもう届かないまっさらな雪原に翔ぶ鶴の静けさ(琴里梨央)
季節外れに降る雪は溶けないでそのまま僕を看取ってほしい(雨野水月)
小雪舞う波止場にひとり残されて泡になるのを待つ人魚姫(小仲翠太)
コンビニで一度解凍した指がはらり受け取る突然の雪(奥 かすみ)
雪面に踏み入る怪獣3歳にしてはじめての破壊衝動(羽紫目うい)
メンバーが川に就職する春をぶっちぎってけ六花んRoller(白雨冬子)
牡丹雪溶けた雫で頬を拭き 君に微笑む涙に代えて(好 由芽)
きみが住む予定になってた天国に苺ショートに似た雪が降る(きいろい)
街中の音も臭いも暗闇も春の気配も消すように、雪(りのん)
雪が降り見えなくなった霜柱出る杭として天に打たれる(紅生姜天ひやむぎっ)
黒き夜にちりぢりちりと雪は舞う捕らえがたきにゆびの水跡(たけのまさ)
淡雪を吸いこんでゆく犬の毛の先も寂しくないように抱く(菜々瀬ふく)
顔に雪四十七士の名が言えた同級生をふと思い出す(新井宗彦)
「来ん来ん」と望まれた雪 懇々と教えてくれるひとりの寒さ(北野白熊)
メイドに もえもえしたら きゅんきゅんしたから 今日はゆきみて もえきゅんきゅん(匿名)
脳トレになりそなくらい知らぬ間に前の車の窓に雪の華(麻数)
「知ってたよ」ひとことだけのメッセージ 根雪はとうに氷となって(木ノ宮むじな)
書いたけど渡せなかった手紙とか詩だったものを雪と呼んでる(夏谷くらら)
トンネルを抜けるとそこは雪国でドン・キホーテもコストコもある(田中薄氷)
初雪はまだかまだかと花々は春の支度へ急ぎ戻りぬ(北野白熊)
いつまでもいつまでも きみに憧れて雪より白い あなたのこころ(そば@短歌)
手のひらに落ちてきたひとひらの雪淡く儚くそして冷たく(水也)
ゆきゆきゆきが降る午前2時ねむくてさむくてもうしにそうだ(とあとゑでぃまぁこんがそれに)
この白はあなたの肌よと教えられ雪葬した日、溶けてしまった(a個)
初雪を見逃した年を数えてはくぼみが目立つ私の世界(村川愉季)
ずんずんと埋め尽くされていくいつか顔も忘れた遠い親戚(てん)
降りかかる雪は素肌に溶かされて寄り添うことは消失だった(中村 杏)
氷点下見失ったもの多すぎて彼岸と此岸どうにでもなれ(九条なびき)
英語では六角形はヘキサゴン雪の結晶見て口ずさむ(紅生姜天ひやむぎっ)
「久しぶり」って突然部屋にやってくるお前の影を消す夏の雪(松たかコンヌ)
明日にはとけて消えると知っててもきみと分け合う雪見だいふく(小仲翠太)
降ってきた雪をこの手で受け止めたアナタと繋ぐはずのこの手で(空虚 シガイ)
音のない世界 あなたの嗚咽さえのみ込む雪になって消えたい(てと)
雲の上かき氷機があるのかと空を見ていた無垢なあの頃(須藤純貴)
(嗚呼ごめん)喘息で咳きこむあなたにうつくしい細氷《さいひょう》をみている(白川楼瑠)
想い出の雪がひらひら舞う日には毛糸の帽子かぶり出かける(織部ゆい)
冷たくて降り積もったら重たくて私の愛を閉じ込めて雪(山野たみ)
生まれきて初めて雪を見上げれば子猿は空に首をかしげる(桜井弓月)
ごめんねのひとことを言いたくなくて白い世界に混ぜて隠した(冷茶猫)
ポンポポン自由に鳥が止まる枝突然の雪見えた冬空(織部ゆい)
「真っ白だ」孫はいないという人の吾子を見る目がまるで初雪(白鳥)
大好きな映画みたいに死ぬために降雪量を気にして生きる(三月)
気がつけば今夜は雪になりそうよ いや、土砂降り、調子を崩した(稲垣英理)
すべからく音を吸着する雪に守られている薄玻璃の杯(水の眠り)
かみさまが決めてくれたんだにんげんの類語はぜんぶ雪なんだって(たこ!)
夏に降る雪を見たことありますか?色がついてる味もついてる(羽紫目うい)
いましょうね、かなしいままで雪の降る待合室に長いイントロ(ケムニマキコ)
良いことも良くないことも嫌なことも悲しいことも白くなれ雪(とあとゑでぃまぁこんがそれに)
脳みそをスノードームと入れかえて何度でもあの雪を降らせた(ぽりぐらふ)
冬の陽に昔話を重ねれば眼裏に咲くあの町の雪(りのん)
銀世界 過去はリセットされたからあなたは生まれ変わった勇者(真朱)
咲いたまま閉じ込められた青色のビオラ雪から愛されすぎて(宮緖かよ)
結晶になれば涙もこの胸に積もるのでしょう 雪の温度で(よしなに)
しんしんと風見鶏にも降り積る 風神も休むこんな寒さじゃ(田中薄氷)
雪解けとともに始まる春を待つ君への想いは深まるばかり(ホワイトアスパラ)
氷雨打つ頬にさす紅《べに》 睦月まで残りし紅葉《もみじ》のたよりなき色(叭居)
初雪を首を傾げて見る猫の三歩進んで二歩下がる脚(村崎残滓)
ブランコかまだ揺れている また来るかもしれずそこだけ雪がよけてる(麻数)
黒髪が白く染まった初めての寝顔を見てる 外は雪、雪(朝路千景)
雪国の生まれじゃないから転んでる少しの雪に少しの傷に(睡密堂)
窓際の私(わたくし)だけが知っている雪もこっそり舞い上がること(白鳥)
人間と雪は似てるキレイでも内にはキレイじゃないものもある(空虚 シガイ)
丁寧につかまえていて空はもうあんなに雪を逃がしてしまった(畳川鷺々)
初雪と駅の白き息子らの声きみが揃えばあの冬なのに(わかば)
初雪はさえずるように軽やかに吐息は空にとけて北風(アサコル)
砂場では雪解けをする子らがいることを歴史は学んでいない(ゆひ)
飲み口に雪が降り込みぼくたちのビールに灯る線香花火(白雨冬子)
雪原のなかで手首を掻き切って太陽目線でスイミーになる(松たかコンヌ)
結婚をしたといううわさをどこかの雪の予報みたいに聞いてた(ぽりぐらふ)
前髪に降りた白雪溶けたのは僕の額と重なったから(須藤純貴)
送迎の園児の首は等しく曲がる初雪見える最後のカーブ(わかば)
古ぼけた麦わら帽子雪だるまにかぶされて知る初めての雪(宇井モナミ)
積雪の鎖骨のような窪みにも指を這わせてみたが崩れて(川瀬 翠)
天と地が逆さになってくれたなら雪は落ちずにすむのでしょうね(りんか)
マフラーに食べられている雪の肌恋をおぼえて唇に紅(海沢ひかり)
落葉樹がうけとめる雪 点滴に穿たれるほそい腕をみつめて(吉野夏雨)
大雪が起こした記憶その中に冬の幼き自分の姿(いちかわ ゆうた)
艶やかに雪を欺く結婚の約束をしたあの子の肌が(あだむ)
神様のプレゼントでしょ、眩しくてまっさらきみはまるで新雪(真朱)
珍しき雪庭へ出る子らと犬だるま作りて集合写真(マチ)
凍りつき形成される結晶よわが言語野に咲け六つの花(月夜の雨)
音のない頬に添える手(ああこれは)初めて触れた雪の冷たさ(ケムニマキコ)
自然には勝てないことを受け入れるために女神を雪で象る(てと)
この世は案外無情だなと思い雪見だいふく一つ頬張る(箭田儀一)
地に迫る小樽の空を塗る雪に観光客は葬列を成す(村川愉季)
手のひらに ふわりと降りて もう消えた想い出だけが 心につもり(ねこまた)