第19回毎月短歌・自由詠部門に投稿いただいた短歌作品の一覧です(表示順はランダムです)
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恋だとは言えない程に淡すぎた想いを飲み込むソーダ水のごと(アサコル)
節約と母から支給貼るカイロ マグマだからと丸め込まれた(谷下弱弱)
「きみのこと嫌いになんてなれないよ」って言わなきゃいけないんだった。(羽紫目うい)
嘘にしてしまいそうでただ見つめてた ガラスみたいに微笑む君を(夜星いさな)
足しもせず引きもしないでありのまま停泊できる港を探す(真朱)
いま君とスノードームの中にいる どうかもう少しだけこのまま(佐竹紫円)
帰路すべて劇場として月光を十四歳が踊っていたり(塩本抄)
さようならきみの記憶に錆びついてしまわぬ前にとける淡雪(真朱)
心にも鍵をかけなきゃ泥棒が心の隙間に土足で入るよ(ましゃこ)
蒼い薔薇 奇跡と呼ぶならそう呼ぼう、君と出逢ったあの日のことを(佐竹紫円)
スシローとパックに入った安い寿司しか知らないけれど特に困らない(ましゃこ)
「いつかまた」そう願う折二度と来ぬ予感がよぎる一筋の川(真野修介)
葉脈を辿った先の優しさの秘めたとこまで独占させて(ムラサメシンコ)
もし誰も罪を犯さないとしても鍵を毛糸で作るだろうか(はじめてのたんか)
玉留めはおたまじゃくしになるけれどほつれた心を縫わせてほしい(菜々瀬ふく)
年上の友は今でも恋をしていると言い切る、夫に恋を(桜井弓月)
人はみな炎のようなゆらめきを抱えてるから弱くて強い(りんか)
評定5 あげたくもなるボロボロの眼鏡ケースが見えてしまって(あだむ)
牢獄だ、そう見えていた夏の窓今はシェルター同じなのにね(瀧)
傷跡のように写った鉛筆の線 消えないものがほしかった(月夜の雨)
水を買うことも平気になってきた都会でだし巻き卵をつつく(梅鶏)
私が誰かの代わりなのなら本物よりも代えのきかない私になってやる(フラ子)
ふたり寝のあとに残った波を消し静かな敷布の前でひとり(さんそ)
怪獣を月に弔い弥勒似のウルトラマンが願う成仏(ぐりこ)
呪いではなく救済として告げるともだち百人なんて無理だよ(汐留ライス)
死ぬ日までネバーランドに居たいのにセボンスターがプラに見えるよ(一文字零)
幸せに保存則があるのなら年始の不幸も帳消しになれ(水野惑)
知れば知るほどわからない君のこともしくは僕のことかもしれない(てと)
あの人をボンネットに縛り付け洗車に行かない私は優しい(ume)
雪山のウサギ おまえは白いこと知らずに駆けて無邪気生きよ(水の眠り)
少しずつ祖母は記憶をほどいてく古い布巾がそうあるように(六日野あやめ)
届かない星を見つめる 孤独とは、スターゲイザー、哀しみですか(木ノ宮むじな)
繋ぐのを迷う小指に静電気 冬の空気のせいだよ多分(村川愉季)
春立てる日にもここでは淡々と避妊の薬が渡されてをり(石綱青衣)
母なりの愛だったんだサバ缶の骨は囁くように崩れて(インアン)
注目!と通知が付いて人々が幸せみせる サングラスする(ムラサメシンコ)
苦しくて何をやっても効かなくて龍角散だけが減ってゆく(空虚 シガイ)
永遠を願ってプリザーブドフラワー でも春風は溶かそうとする(汐)
君の目に吸い込まれるようにして重ねた唇 緩やかに喰む(水柿菜か)
思春期に手に入れたのは白地図とラム酒とハイライトの戯言(ツキミサキ)
人知れず空虚を心に飼っていて時々餌をやって育てる(北野白熊)
クリームを絞る意味とはきみのためぼくのためのよろこびのためだ(水也)
バファリンをふた粒割れば完全な優しさひとつ作れるかしら(白鳥)
目の前の客が呪文を唱えてる梅田のスターバックスコーヒー(折戸みおこ)
幻聴のような音楽吸い込んでいつでもすこし湿ったタオル(畳川鷺々)
入れ過ぎて鍋から少しはみ出した白菜の葉に迫るガスの火(棚果)
ひとひらの雪が重なりゆくさまは白は正義という主張だけ(北乃銀猫)
犯人はこの中にいる 絶対につまみだすから待ってろパクチー(奥 かすみ)
歌人でしょ ちゃちゃっと軽く詠んじゃって!アイスクリーム落とした俺とか(兼平 細菌)
顔中の糸がほつれて涙腺も口角も緩くなってゆく人(はじめてのたんか)
リボルバー 弾丸としてひとすじの光を込めて引き金をひけ(宮緖かよ)
行ったことないのにきみは「地獄」ってわたしの窓をのぞいて言った(月夜の雨)
どれほどの死人を見送ってきたのかな 自動改札機を抜けていく(雨野水月)
桐箪笥からワタクシ性を取り出してロンダリングのギリギリダンス(石川聡)
美味しさは背徳感に比例する 猛毒を手にほくそ笑む君(瀧本土筆)
「私も」の続きかき消す踏切の音が鼓動を余計に煽る(さに。)
母のいた春をさがして早蕨が輪廻の糸を巻きはじめている(小野小乃々)
平安の月は今より大きくて そう、カントリーマアムあなたも(北野白熊)
フォーマルな路地裏の赤提灯で古式ゆかしくはじめの麦酒(鯖虎)
手を出せばとりどりの色塗られたる爪 吾子はまだ授業が嫌い(まちのあき)
図鑑すら死語になるのね教えてよグーグルピクセルあの鳥の名を(真野修介)
髪型をカート・アングルみたいって言われてたぶんほめられてない(汐留ライス)
写真では朝か夕かもわからずに涙のわけもぼやけたままで(葉澄葉)
チュッ 可愛くてごめん 本当にごめん あのとき君を砂にしちゃって(松たかコンヌ)
寒空に向かって梅は咲き始め暦のうえは春のはじまり(青色紺色)
おみやげをもらえない暮らし甘すぎる果実をゆびで割りたい 冬の(畳川鷺々)
自転車の速度を上げる今日もまたさみしい夜に捕まらぬよう(花林なずな)
自転車で夜を巻き取るようにして進む見てろよ朝は来るんだ(せんぱい)
花びらにキスを落として茎を切るガラスの瓶はきれいな棺(睡密堂)
弾丸の再装填をするようにカフェイン錠を薬局で買う(柳葉智史)
怖かった声を聞くのも辛かったそれは煙と燃えかすだった(山野たみ)
ストレイト ゴーストレイト ターンバックゴーストレイト そこをキスです。(春鰊)
例えば君を名探偵とするならば僕は密室の死体でいたい(石綱青衣)
こどもってたいへんだよねいつだってかわいくなくちゃいけないもんね(てと)
全米はもう泣かないか やわらかく濡れたコーラのカップが重い(青野 朔)
じれったい 君と僕とを隔ててるものは布地か頑なな目か(北乃銀猫)
ストローの蛇腹の角度ちがしても君とおんなじティーラテにする(水の眠り)
君という星をなくして衛星は自由航路の船へとかわる(宇井モナミ)
眼科医の懸念事項が私《わたくし》のチャームポイントとキミは告げたり(しみず)
こっそりと泣くヒーローを見つけたら声をかけちゃう馬鹿でありたい(鈴木美波)
永遠に一緒にいよう(運営がいつかふたりを分かつときまで)(六日野あやめ)
風ひとつ日記は手紙に変わりゆく とじなければ飛んでしまうような(短歌パンダ)
水浴びをしている象の瞳には丸い地球がまあるく映る(ゆひ)
よかったらこれをどうぞと言いたくて蛇口をひとつ持ち歩いてる(宇祖田都子)
半円を描く軌道で漕ぐ君を風が残像にするブランコ(宇井モナミ)
虚しさが至る所を蝕んで塩分足りずポテチで補給(さに。)
黒板を爪で掻きたい夜なので星のお腹にいれてください(たな)
アスファルト濡れて乾いてまた濡れて変わらない日々ひとりで刻む(箭田儀一)
年越しの嬉しさ寂しさごった煮の湯船に浸かりゆく初詣(谷下弱弱)
あたらしい街、わたしを知らぬ図書室で詩集をひらく指「春と修羅」(白川楼瑠)
あと1ミリ擦り減れば雨が沁みてくる靴底としてぼくとあなたは(石川聡)
シュッというマッチを擦った音がして香りとともに消えてく昭和(ツキミサキ)
また今度また今度ってもしかして無限に生きるつもりかきみは(宮緖かよ)
東京の鳥や魚は天国に仲間がいると思いすぎてる(短歌パンダ)
間違っていたならごめん僕たちは互いに素だと思いこんでた(奥 かすみ)
一生を暮らすと決めた水槽のなかには水も入れなくていい(水也)
口紅をティッシュに移し薄くするこれみよがしに愛してはだめ(ume)
僕のから君のに変わる瞬間のためにダリアの花弁はひらく(村川愉季)
想い出をうまく大事にできなくて今日もアナタが過去にならない(空虚 シガイ)
白鳥にあたたかな地とうなずかれ水仙群れるあたたかな園(夏谷くらら)
足を病む父に肩貸す母見れば宗教画のごと静かに光る(琴里梨央)
匂いとかあなたであってあなたじゃないものばっかりを追いかけている(木ノ宮むじな)
午前九時靴紐固く結ぶのは遅れぬために遅れぬように(春永睦月)
ようやっと寝ついた瞼をふちどる小さな睫毛を照らす午後の陽(折戸みおこ)
喧騒の道路に降りし粉雪は漂白剤のように染み込み(海沢ひかり)
つまらない町にきましたつまらない ここには君の足跡もない(りんか)
月がきれい 君は少しの間を置いてコペルニクスを語り始める(琴里梨央)
青空を掴もうとして知る怖さジャングルジムのてっぺんの風(ホワイトアスパラ)
こだわりの棒に宿りし英雄譚かつての僕は勇者だったね(灯志)
戦友よ腹背《はらせ》を我に預くなら月から見えぬとこまで往かむ(ゆき)
一等星 君の光に憧れて長い道のりを走り出す(はざくらめい)
わたしだけの言葉を探し夜気を吸う 俵万智にはなれなくたって(桜井弓月)
後輪の空気がちょっとぬけていてきみに言いたい言葉が出ない(小仲翠太)
窓際で手を振る布のカーテンも君の別れを知っているかも(箭田儀一)
ただの道なのに怖くてそれ以上進めずにいて哀しくもあり(瀧)
死んだって人をエモがらせるだけでベランダで吐く煙のゆくえ(柳葉智史)
預かったあなたの蛇が2メートル超えるまでには帰ってきてね(ぐりこ)
濁らずにどこかの海に届くまで蛇行を繰り返している僕は(梅鶏)
湯沸かしの中の湯冷まし 珈琲を淹れる準備はしてあったのに(さんそ)
かたつむり食べた通りに糞をする恋を食んだら何色うんち(きいろい)
短歌とは深呼吸のこと言の葉を吸って静かに吐き出す宇宙(アサコル)
涙越し 一番星はベガだった あのきらめきがあったら彼は(汐)
寒空に咲く日輪の眩さを透く蝋梅のあたたかさ見ゆ(灯志)
ややこしい世界を生き抜く皆様へご無事でしょうか、息してますか(ホワイトアスパラ)
夕飯はビーフシチューが良いなって死んだじいちゃんが言ってたよ(鈴木美波)
透明なひかりの中を歩くとき非常出口は雪の入口(まちのあき)
てのひらに着地したのは雨でした泣けないくらいきれいな最後(睡密堂)
僕たちはそれぞれ命の巣を持って古代のリズムで揺れている(てん)
むらさきの家並みのなかで懐かしく破産していたインドカレー屋(塩本抄)
私だけたぶん愛してくれている真綿の布団が結構重い(小仲翠太)
地球すら銀河のなかで舵を取る社会の波の激しきことよ(海沢ひかり)
または夢或いは絵画の頭蓋に花の棺としてある器官(川瀬十萠子)
正しさを失ったから標本にされずにあの日の花を探せる(菜々瀬ふく)
逆光はさよならの可視 夕去りにラナンキュラスの転がる頭(川瀬十萠子)
特性のその一言で誰彼を片付ける人二月のテラス(あだむ)
ガラス越し見つめ続けた街の灯は都会暮らしをやめなと言った(茶葉)
「死にたい」の入浴剤を入れた風呂ふやふやになるまで浸かって溺れる(水柿菜か)
こいぬかもフランスパンかもわからないふかふかのもの抱えてはしる(きいろい)
いつから太陽はオレンジでいつから海は青色でいつからハートは桃色で醜い大人へと進む感性を5歳の私が食い止めている(陽愛)
ぼくを待つ夜に眠っているきみを起こさぬような空の飛び方(松たかコンヌ)
いにしえの美容室から颯爽とマリの娘と思われる人(白鳥)
飛行機かシャボン玉かが記憶から消されただけだ まだ戦える(宇祖田都子)
死にたいと思うほどには砂浜を踏みしめている感触がある(雨野水月)
愛犬を抱いたわたしは春のなか最後に母が撮った写真の(小野小乃々)
ちょっとずつちょっとずつ死ぬこの命毎朝花に水やるからだ(一文字零)
アレクサと電気ばかりを繰り返すエキゾチックな南米の鳥(鯖虎)
飛ぶ鳥もビルの隙間で散る花もみんな等しく短い命(葉澄葉)
今週もお疲れ様と乾杯を つい買いすぎる辛めのポテチ(紅生姜天ひやむぎっ)
愛情と憎しみなんて紙一重鎧をまとい心を閉ざす(山野たみ)
だいすき だけど確かにこの胸にあなた由来のさみしさがある(美鷹周)
原初たる男の骨を隠し持ち女ふたりが番う温室(夏谷くらら)
ベランダで鼻歌歌う合いの手に くしゃみ挟まる春の訪れ(紅生姜天ひやむぎっ)