第19回毎月短歌・テーマ詠「好きになった瞬間の短歌」部門に投稿いただいた短歌作品の一覧です(表示順はランダムです)
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君と交わった視線がぱちぱちとソーダの泡となって弾ける(半)
肯定も否定もしない優しさに一瞬にして心奪われ (雨宮雨霧)
立ち位置も景色さえまだ覚えてるあの日心に君が生まれた(南千里)
ひねくれた我のラベルを剥ぎ取ってあなたはいつも優しく食べる(はるかぜ)
「落ちる」ってそういうことか 底からは君の光を求めるしかない(老川由良)
ひとりきり 花や光と遊ぶ君影にキラキラ 見えた寂しさ(るるちびにゃん)
春の日のあけっぱなしの縁側のようにケラケラきみは笑った(木ノ宮むじな)
飼っている猫の名前も愛おしく 気付けば話す犬派のわたし(八の九)
ひとさじの蜜を飲み干すようにして甘さの果てを知りたくなった(りんか)
風が吹く目が離せない捧げたい人生すらもすべてあなたに(りお)
偶然に恋に落ちたと言い訳を 両足揃えて飛び込んだのに(紅生姜天ひやむぎっ)
なんとなく好きな歌とか言いあってそんな時間を始まりとよぶ(奥 かすみ)
胸のなかまだ開けてないひきだしにラベリングしたあなたの名前(一福千遥)
占いのようにスタバは真冬日のおいしい石鹸だよありがとう(塩本抄)
うたたねの君のまつげに絡まってぼんやりしちゃってこうなってます(琴里梨央)
無愛想な君の犬歯の鋭さに狩られる者の血が騒ぎだす(北野白熊)
冬なのにあなたの声は春風でああもうこれは逃げられないや(睡密堂)
すれ違う瞬間、風が吹き荒れて君の名前は呪文になった(汐留ライス)
つややかなその身をほおばり飲み下す「我が事にしたい」 衝動発芽(別木れすり)
はるかぜのことばをはなすはなびらをまぶたのおくにふらせたひとは(まちのあき)
きっかけは義理チョコもらったところから その気にさせたのは君だからね(雅佳翠)
誦じた「伊豆の踊り子」その声で恋って土砂降りなんだと気づいた(亜麻布みゆ)
借り物のノートの隅の落書きに気付いてくすり、惹かれ始めた。(瀧本土筆)
君がふと笑いかけたあの瞬間シャッター切られ永久保存(桐谷やまと)
よく言うよね気付いたら好きになってたとか ちょうどね今気付いた(早坂ユキオ)
綺麗ごとしか言えないと言う君の 哀し気な瞳に落ちてゆく(新井田歌子)
苦しみを 認めてくれた 意思強くあの時の君 好きだったのに(霜百合双葉)
彼女が落ちる瞬間を見た僕は不本意な第一発見者(さに。)
店員にごちそうさまと誰よりも先に伝えてくれた横顔(あだむ)
あ、これは花粉症だと自覚したときと同じだ 君が好きだよ(宇祖田都子)
味はなく脇役だったこんにゃくがおでんの主役になったこの冬(水の眠り)
買ってきた葱を両手でへし折った姿が好きだなんて言うきみ(川瀬 翠)
尻尾までつぶあんぎっしりの鯛焼きいっしょに小躍りしたのがはじまり(早春)
夏の風、頬を撫でても心地好く緑も花も色濃く見えて(ume)
体温がうごく こんなに素晴らしい音楽はもう夢にちがいない(畳川鷺々)
水槽を並んで見上げる日のことを思えばそれは好きということ(ソウシ)
砂浜の砂はさらさらやさしくてふたり黙って海をながめた(月夜の雨)
夜の凪あるいは透明 新月の産声もあげずひそり生まれる(小仲翠太)
落ちるのは恋も雷も一瞬と遥かを見てる この世ではまだ(松風淀)
観覧車 上に行くほど音が消え密室からの海のきらめき(水の眠り)
いじめられクラスみんなに無視されたなのにあなたは私に声を(織部ゆい)
女神には喩えられない 指先にぼくだけが見た湖底のぬめり(畳川鷺々)
ドアノブをそうっと回してくれたからわたしの部屋にひかりが射した(月夜の雨)
はじまりは水滴みたいな視線かな気づいて揺れてまだ触れられない(箭田儀一)
一度目に目と目が合って好きになり二度目で悶え三度目で死ぬ(一文字零)
おもしろいどんぐりひかるかえさないこれはかなりのはつがをします(まちのあき)
春琴抄壁の穴から伸びた手の熱を信じてみたいひとひら(村崎残滓)
火花散るあなたのひとみを見たわたし あれは季節外れの花雷(汐)
「しょうこ」ってわかってくれた今までの人は「がらす」と読んでいたのに(空虚 シガイ)
◎ わたしを好きになれた時内から外にペンは動いて(松たかコンヌ)
散る梅に嘆き明かした朝焼けは梅染めでしかなく恋を知る(汐)
連続で夢に出てきた君のこと朝からずっとチラチラ見ちゃう(宮緖かよ)
千円を百円玉にし続けて君の嫌いなフィギュアを獲る君(谷 たにし)
それからはいつか貴方に向けるだろう銃口を抱く ひどく冷たい(ケムニマキコ)
死ぬまでの鼓動の数が決まってるなら延びた今の一拍分(冷茶猫)
袖までの毛糸が足りず泣いているベストを尽くす君が愛しい(一筆居士)
柔らかな響きに刺さるしゃがれ声 この感覚に賭けてみたい(棚果)
ゆっくりと笑った君の吐く息で私の海にたった漣(匿名)
骨ひとつなくほぐされる焼き鯖のもう死んだ雌と安堵するなら(夏谷くらら)
逢うためにここに入学したのだろう春の終わりのぬかるみの熱(菜々瀬ふく)
いいのかなアナタの横に並ぶため陰から一歩あるきだしても(空虚 シガイ)
雷に打たれて死んだしあわせと引き換えにして飲み干す不幸(ゆひ)
睫毛の翳り きみの瞳のたをやかな憂ひに溺れ、溺れて知りぬ(碧乃そら)
君の手の赤い毛糸のあやとりを目を合わせずに小指からとる(一筆居士)
体温で香りがよく立つ石鹸のシーブリーズはもう昔のこと(綿貫うつつ)
昨日からハウリングする君の声音を下げるな距離はこのまま(一文字零)
風の空 あおからあかに変わるのが悔しい 君の頬まであかい(短歌パンダ)
聴こえてる?「好きですから」と「たまらなく」までの二秒のわれの心音(小野小乃々)
人づてにLINE交換したがっていること聞いて咲く桃の花(真朱)
じゃあねって言ったのに三度振り返り三度答えが合った改札(夏谷くらら)
チロルチョコ、義理で渡したはずなのに大事にすると君が言うから(北野白熊)
雨空をつらぬく金の灯火は初めてわたしを諫めた静声(菜々瀬ふく)
稲光 真面目な黒い眼の奥でまたたくスピカみつけた瞬間(みつき美希)
マイナーな美術館の展示を君は僕よりも真剣に見ていた(雨野水月)
ホームの足あとからはみ出さぬよう先頭に立つあなたは猫背(たこのまえあし)
同僚にプロポーズされる夢を見て私の返事が今さら気になる(ZENMI)
見とれてた遅刻間際にママチャリで膝付くくらい傾く君を(梅鶏)
いけるか?と思ったときはもう好きでどこが好きかは後で探した(宇祖田都子)
何気ない電話をしてたあの夜が貴方に落ちる瞬間だった(瀧)
オーロラは見たことないし知らないしでも寒いから手をつなぎます(松たかコンヌ)
さりげなく物を拾って声かけるあなたって嗚呼やはりいいひと(海沢ひかり)
私は私が薄情な奴だと知っているいつか来るであろう意識の目移りに、すでに怯えているそれでも、それにときめく訳を今私は知ってしまっている(陽愛)
外しても外さなくても美味しいね二人やきとり頬張る夜に(インアン)
長話がつづくエレベーターホール業務用ではない「またあした」(村崎残滓)
夕暮れに声を聞きたいと思ったら心がすこし欠けているかも(納戸青)
目が合って火花散らして星を生むわけじゃなかったけどこれは恋(てん)
ありふれていない名前をつけなくちゃ 雨に小指にきみとの時に(短歌パンダ)
MVの踊る姿に神宿り崇める想いオタクと化せり(蒔岡 るね)
かめさんが目の前を通りすぎていく「瞬間」みたいな恋の加速度(漁火いさな)
「いま声が掠れててね」と照れながら困ったように笑うあの顔(いちごさがし)
しっているひとはどこにもいないから夜明けはきれい、外国みたい(白川楼瑠)
帰り道コンビニに立ち寄りましたリップを買おうとしたからです(おいしいほうじちゃ)
見回すと彼も笑えずテレパシー同じバベルの住人と知る(瑞波草)
ぼくの中 好きな音だけ取り分けて雨が降っても君だけでいい(三好しほ)
たおやかなあなたの核に燃え盛るマグマがあると気付き、延焼(あきの つき)
きみの手を初めて握ったそのときの慣性だけで今日も生きてる (佐為)
たんぽぽの綿毛のように飛んできて勝手に心に咲きやがって(辻永とも)
コピー機を2人で囲みガチャガチャと心を繋ぐ深夜残業(あだむ)
知らぬ間に落ちた花びら君がとる運指のように滑らかな指(りんか)
心臓が跳ねあげられてそれ以来息が苦しい溺れるさかな(木ノ宮むじな)
ひとりでも生きてゆけると拒んでるきみの背中が忘れられずに(花林なずな)
今日これで直帰しようって言いながら君はネクタイ緩め笑った(北乃銀猫)
ひとりだけ各停みたいな相槌を打ってたけれど虹をみている(きいろい)
北風の 運ぶ寒さが 身に沁みて 人肌恋しい 浮かんだあいつ(おーさん)
音・匂い・光・温度が澄んでいき僕の一部になってしまった(てと)
まっすぐなこころを向けてくれたから信じていいとこころでわかった(佐竹紫円)
「そこにいて」切れた電話の5分後にどこでもドアの色のパーカー(村川愉季)
巡り会う前のあなたを知りたくて本棚にある星を見ている(朝路千景)
タンポポを見た時君が呟いた「ダンデライオン」聞いた瞬間(藤瀬こうたろー)
だってもうあなたなしでは光れない 月の海でも溺れてしまう(よしなに)
銀色のあの粒つぶをアラジンときみが唱えて浮かぶ絨毯(きいろい)
あぁそうかあなたに出会ったその刹那はっきりとした私のかたち(みーこ)
裏の木は桜だったと10月に越した住まいの初めての春(内田睡眠)
二人だけ同じ場面で笑ったね十年経っても褪せない記憶(はざくらめい)
また明日 パズルみたいに単純にとけないだろう私のかたち(納戸青)
つまづいた私の手を取り支えてくれた瞬間君に恋したあの日(月宮 奏)
プロ倫やマルクス熱く語るやいなや保育士になりたいと言い出す(栞)
RUN! だからいいんだよなとチョコレート包む紙みたいな感想(プロポーズ短歌界隈)
目が合って散った火花のそのかたち咲く彼岸花赤さを知って(灯志)
爪を噛む癖が治っただって君指が綺麗な人が好きだと(りお)
ヒトでした影絵のように色のない きみに名前を呼ばれるまでは(宮緖かよ)
振り返る思えばあの日電話越し言葉交わしたそれがはじまり(瀧)
また目が合った!もしかして俺専属の向日葵だったりしますか? (花原冬莉)
好きだと言うだけでなんだかお洒落な雰囲気を出せる、しかも安い(中野半袖)
野の花は摘まずにきみはひとりだけ小石を拾いあげていたんだ(Rhythm)
気付いたら姿をいつも目の端で探しているのどんな時でも(静麗)
しりとりでこんなに笑えるなんてこと今までわたし知らずにいたよ(おもらし)
夕焼けに斜めから見る君の顔 まつ毛にも影が出来ると知った(紅生姜天ひやむぎっ)
人波でくしゃっと笑う君がいて溺れてしまう一秒の海(白鳥)
言い訳をあーぱつあぱつ探してるあーぱつあぱつまだ好きじゃない(大頭非力)
あぁそうか 俺落ちたのか 知らぬ間に 実るか分からぬ君への恋に(麻数)
液晶の波をかきわけ現れた運命と書いて事故と読もうか(みーこ)
シズル感だんだん狂わす嫌悪感回路爆誕「なまがきたべたい」(別木れすり)
たましいが爆ぜるみたいな水光がきみの後ろに見えた気がした(早春)
しめサバが昔は嫌いだったのにどういうことだうまいじゃないか(汐留ライス)
ロックグラスの底のかたちの水滴を拭った指がまだ濡れている(空飛ぶワッフル)
「好き」の「好き」知ろうとニガテ噛み砕く初めて触れるトマトの甘さ(史記)
この人は私を好きだと勘違い恋はいつでも思い込みから(蒔岡 るね)
きんとぎん経費で落とすお茶目さんなんかいいなが重なる瞬間(南千里)
その歌はドアの向こうのテレビからつまらなそうに姉は見ていた(新井宗彦)
花弁を君は踏まずに歩くからまたひとつ好きが増えてしまった(宇井モナミ)
あの店の薄味アイスコーヒーはひとりの日には飲めないみたい(村川愉季)
僕よりもはじめましての音量が大きい君と仲良くなれそう(奥 かすみ)
下駄箱に口約束はなく必然、その影を恋と呼ぶように(三好しほ)
無防備なきみの寝癖が少しだけ可愛く見えた冬のキャンパス(花林なずな)
首筋にスッと右手が伸びてくる「芋けんぴ――髪に付いてたよ」(oneoneone)
定食の米ひと粒も残さずに寡黙に食べる美しい人(インアン)
逃げ道は気づけば全部塞がれて私決めたわ、貴方が好きよ(鈴木美波)
目の悪い人が遠くを見る時のするどい色気、蛇を仕留めたい(パイン井)
意地悪な男子が雨の放課後に差し出す戦隊ヒーローの傘(宇井モナミ)
肩並べ座ってるのは私ではなかった図書室陽のあたる席(小仲翠太)
居酒屋のアリアきみなら何度でもご注文繰り返してほしい(プロポーズ短歌界隈)
ジャズ キャラメル紅茶 小説 白い花あなたの「好き」を好きになりたい(高瀬怜)
左手で書いたみたいなサイン本一途な汗を讃えてなぞる(たこのまえあし)
あなたとの出会いを楽譜で表す 八分音符とクレッシェンドで(箭田儀一)
いつだっけ目が離せなくなるだけだってまだきみのこと好きじゃないから(水也)
さえぎらず聞いてくれたるきみといてコーヒーは気づけば冷めている(小野小乃々)
バカになるくらいに好きだからわかんねぇけどなんかもうずっと好き(てと)
言語野の機能不全を感じとり下の名前で呼べなくなった(はじめてのたんか)
わらってる でも目はうつろなの知ってるの 知ってるだけよ、気になっただけ(野田ひかる)
同じ曲!だった瞬間からきみと始まるドラマの主題歌になる(真朱)
見た目から始まりギャップに萌えて弱さを知ればもうダメ好きです(早坂ユキオ)
喧騒の砂の扇のまんなかで 君の「打て」だけ芯でとらえた(佐為)
「私には興味ないって言ってね」と言われたくなんかなかったんだな。(瀧本土筆)
あまやかに腰をゆらして死を歌う人魚に恋してはダメなのに(みつき美希)
恒星のような瞳が少しだけ揺れ匂い立つ翳りを帯びる(あきの つき)
気まぐれな蝶が湖面に降り立って私の胸に消えない波紋(ケムニマキコ)
永遠に思えたような三年を何もなかったと言ってまた春(新井宗彦)
赤本と参考書にサンドされてたサリンジャー君をつかまえたい(睡密堂)
ラムネ飲む喉仏がビー玉に見えて私のものにしたくなった(匿名)
惚れちゃうよ「言い得て妙だ」と褒められ意味あってるか調べる君に(実森詩音)
まなざしに微笑み返す前にもう線香花火は地面に落ちて(川瀬 翠)
あなたのすがたがハレーションする 雨が降る、青空にきらめく雨だった(野田ひかる)
「ついてきちゃダメだよ飼ってあげられない」でも追いかけてきちゃったもんね(北乃銀猫)
この街にはおれと同じくらいのダメ人間がたくさんいるようだ(中野半袖)
たこ焼きの最後の一個をくれたこと きっかけなんてそんなもんだよ(ZENMI)
軽やかにダッフルコート着こなして冬の陽だまりみたいな背中(茶葉)
割れた種そっと覗かす若葉見てまだこの世界愛せる気がする(葉澄葉)
「カッコイイ!」バットを構えた姿を褒められて即入部を決意(須藤純貴)
萎れてる僕の心に染み込んだ歌声にあぁ咲いてしまった(白鳥)
きらめいた星のかけらがころり落ちぼくたちの手がふれた瞬間(水也)